「下痢や嘔吐で水分が失われるため、経口補水液などで十分に水分を補給することも忘れないでください」(※写真はイメージ)
「下痢や嘔吐で水分が失われるため、経口補水液などで十分に水分を補給することも忘れないでください」(※写真はイメージ)

 梅雨から真夏にかけては食中毒が発生しやすい時期だ。食中毒の原因物質はさまざまあるが、よく聞く名前はノロウイルスとO(オー)157。この二つ、いったい何が違うのか? 両者の違いや共通点、さらには感染の予防方法などについて、東京都健康安全研究センターの食中毒に関する情報担当者に聞いた。

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 食中毒の原因物質には、ウイルスと細菌がある。ウイルスの代表的なものがノロウイルスで、細菌の代表的なものが腸管出血性大腸菌の一つ、O157だ。いずれも感染力が強いことは共通している。

 東京都健康安全研究センター食品医薬品情報担当課長の小川正氏(薬剤師)は、両者の違いをこう説明する。

「ノロウイルスはヒトの小腸の粘膜で増殖し、食品中で増殖することはありません。それにノロウイルスによる食中毒は、冬季に多いのが特徴です。これに対してO157に代表される腸管出血性大腸菌は、病原性をもった大腸菌のうち、ベロ毒素という毒素を産生するグループであり、条件がそろえば食品中で増える可能性があります。これによる食中毒は、梅雨から真夏にかけてとくに注意が必要です」

 ノロウイルスは、食品中で増殖することはないものの、強い感染力により、わずかでも食品についてしまうと季節を問わず食中毒を起こすが、とくに冬季に多く発生している。

 一方の腸管出血性大腸菌も強い感染力が特徴であり、一年を通して注意が必要だが、初夏から初秋にかけては多発期となっている――ということである。

 ノロウイルスはカキやアサリなどの二枚貝による感染が多いと思われがちだが、近年は、手洗いが不十分なためにウイルスが付着したままの調理者など、人を介して感染するほうが多い。つまり、どの食品でも感染源になり得る。腸管出血性大腸菌はもともと牛などの家畜の腸管にすみついている場合があり、加熱が不十分な牛肉をはじめ肉類が感染源になることが多いが、ノロウイルス同様、感染した調理者など人を介して感染することもある。

「どちらも感染力が非常に強く、とくにノロウイルスは、患者の吐物がじゅうたんにつき、それが空調を通じて広がり感染したという事例もありました。こうした食品を介さない場合、届け出上は食中毒ではなく、インフルエンザなどと同じ感染症として扱われます」(小川氏)

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重症化すると重い合併症も