急に無理な目標を立てると逆にやる気が出なくなるという研究結果がある。

「達成感がなかなか得られないと、幸福感も得られません。だから身近な目標設定で達成感を得ながら、夢に近づいていくことが大切なのです」

 次に「ありがとう!」因子を高めるには?

「『ありがとう!』因子が低いということは、気配りが苦手で、他人に感謝できないということ。ゆえに友人もなく、孤独なのです。『ありがとう!』因子を高めるには、感謝の練習をすることです。これは私もよくやるのですが、たとえば家から駅までの10分間、心の中でずっと感謝をし続けるのです。妻に、親に、ご先祖様にありがとう、道路沿いの花に、目を楽しませてくれてありがとう、道路をつくってくれた方にありがとう。これをやると自分が普段いかに感謝をしていないか、がわかります。なんでも『当たり前』と思わないことです」

 では「なんとかなる!」因子を高めるには?

「後ろ向きな気持ちを切り替えるクセをつけることですね。これには『メタ認知』が有効です」

 メタ認知とは?

「『ああ、自分はなんてダメな人間なんだ』は認知です。この『ダメだ』と考えている心を上から俯瞰で見るのがメタ認知です。ダメだ、嫌だという認知は部分に着目している状態ですが、メタ認知は全体像を見るわけです。全体を見るクセをつけると、たとえ嫌なことがあっても『ま、でも結果に支障はないな』『大騒ぎすることもないか』と気持ちを切り替えられます。これも普段からの練習ですね」

 ここまでの三つの因子を高めていくと、「ありのままに!」因子もつられるように高くなっていく。

「人間の心の半分は後天的に変えることができるのです。自分が幸せになること、自分を愛することも大事ですが、利己で完結しないようにしたいですね。一番幸せになれる人は自分を愛する気持ちより他人を愛する気持ち、他人の役に立ちたい気持ちのほうが少し大きい人なのですよ。誰もひとりで生きているわけではありません。同時代に生きている“みんな”でこの社会を生きているのですから」

(赤根千鶴子)

週刊朝日 2018年6月22日号より抜粋

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