今年春の国公立大医学部入試で、全50大学の合格者約5500人のうち、東京、愛知、大阪、兵庫の4都府県の高校出身者だけで3割を占めたことがわかった。医師不足解消のため、定員に地域枠を設ける地方国公立大も多いが、医学部合格者が都市部に集中している姿が浮かび上がる。
4都府県にある東京大や名古屋大、大阪大、名古屋市立大、大阪市立大などの国公立医学部定員は計約750人。全国の国公立医学部定員の1割超だ。4都府県の医学部志望者は、地元国公立が狭き門で、地方の大学を受験する人も多い。
約5500人のうち、東京都内の高校出身者が700人弱と最も多い。次いで多いのが愛知、大阪、兵庫の高校出身者。4都府県を合計すると約1800人で、全国の3割超になる(グラフ参照、『週刊朝日』6月15日号などから作成)。上位10都府県で全合格者の過半数を占める。
都市部の受験生が地方大学の医学部に入ると、卒業後に地元の都市部へ再び戻る人も多い。このため、医師不足に悩む地方の国公立大は、地域医療に一定期間携わることなどを求める地域枠を設けている。ただ、枠の要件は大学で異なり、地元出身者でなくてもよいケースもあるため、医師確保の面で課題があった。
厚生労働省の調査によると、山形大や福井大のように地元出身の医学部生が2割に満たない大学もある。地元から入学すれば、地域枠でなくても地域に定着する可能性が高い。そこで、都道府県知事が地元出身者枠の新設や増加を大学に要請できるように、政府は医療法と医師法の改正案を今国会に提出している。
医学部合格者が多い4都府県は、中高一貫の私立高校が多い。国公立医学部の合格者が全国で最も多いのは、愛知県の私立東海高校で132人(表参照、『週刊朝日』6月15日号から)。2位は兵庫県の私立灘高校で96人だった。地元出身者枠が増えれば、医師不足解消にはプラスとなる一方で、都市部の受験生にとって医学部がより狭き門となる影響も出そうだ。(本誌・中川透)
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