企業業績が好調だ。世界の景気拡大や円安を追い風に、2018年3月期決算で最高益となる企業が相次いだ。経営環境だけでなく、時代のニーズをとらえたヒット商品やサービスの存在も見逃せない。消費者の心をとらえたモノは何だったのか。
ヒット商品の威力を見せつけたのが、任天堂。2018年3月期の売上高は前年の5千億円弱から1兆円超に倍増、営業利益も約300億円から約1800億円へと6倍に増えた。昨年3月発売のゲーム機「ニンテンドースイッチ」が、国内外で大人気なためだ。
本体はタブレット型。持ち運んで遊ぶことも、テレビに接続して大画面で楽しむこともできる。任天堂は、12年末に発売したゲーム機「Wii U(ウィーユー)」の不振で業績が低迷していたが、スイッチの売れゆきで好業績に転換した。
ゲーム機とソフトは日本が強みを持つ産業。バンダイナムコホールディングス(HD)とコナミHDはソフトがヒットし、ともに営業利益が過去最高だった。
楽しさが強みになるのは、ゲームだけではない。
「通常のトイレクリーナーより高い商品だが、もこもこと泡が出てきて掃除が楽しくなる。全般的に、利益率の高い商品がよく売れ、稼ぐ力がついてきた」
そう話すのは、日用品大手エステーの鈴木貴子社長。「洗浄力 モコ泡わトイレクリーナー」の販売が好調だ。消臭芳香剤「消臭力」に次ぐ新ブランドが、「洗浄力」。便器ふちの裏側にスプレーすると、泡が広がって汚れを落とす。働く女性が増え、掃除は短時間で効率的にしたいとの声が強まり、掃除で気持ちもすっきりする品をねらった。
働く女性のニーズをとらえて伸びるのが冷凍食品。日本冷凍食品協会によると、17年の国民1人あたりの年間消費量は前年から1キロ増えて22.5キロになった。
最大手のニチレイが昨年3月に発売したから揚げ「特から」は、「秘伝のしょうゆだれにつけ込み、サクッとした食感」が売りで、人気を集めた。「本格炒め炒飯」「焼おにぎり」なども含め、同社の家庭用調理品の18年3月期の売上高は前期比8.9%増の571億円だった。
働く女性だけでなく、少人数の家族や単身世帯も増えた。永谷園HDは、個食タイプのフリーズドライみそ汁「味噌汁庵」が受けている。1食分ずつ個包装のブロックタイプのみそ汁で、1個100円。お湯を注ぐと具がぱっと広がり、手軽に味わえる。同タイプのみそ汁の市場は伸びており、同社は「家族の形態が変わってきている」という。
ハウス食品グループ本社は、調理用ルウカレーの売上高が前期比2.5%減の371億円に対し、レトルトカレーは10.4%増の153億円と伸びた。じっくり煮込んだ濃厚な味わいの「プロ クオリティ」などが人気の品だ。19年3月期も「伸長する個食化市場への対応強化」を掲げ、ルウは微減と見込み、レトルトは約10%増をめざす。