新潟や千葉で女児が被害に遭う痛ましい事件が起きた。殺人、強盗、詐欺、すり、ひったくりなど様々な事件が連日起きているが、報道されるのは一部。事件全体の件数を都道府県別にみると、地域差が大きいとわかる。各地の犯罪事情や安心して暮らせる地域はどこかを探った。
まずは昨年1年間の犯罪の発生状況を振り返りたい。
警察庁「犯罪統計」によると、通報や被害届で全国の警察が認知した刑法犯は、約91万5千件。認知件数は2002年の約285万4千件をピークに減る傾向で、16年には戦後初めて100万件を下回った。17年も前年比約8%減ったが、それでも1分間に約1.7件起きた計算になる。
都道府県別にみると、東京が約12万5千件と最も多く、全国の約14%を占める。2番目は大阪で約10万7千件。ただ、人口10万人あたりに換算すると、大阪1208件、東京926件と順位が逆転する。犯罪が多発する大阪は、認知件数に占める検挙件数(検挙率)も21.8%と全国ワーストだった。
認知件数が最も少ないのは、実数でも人口比でも秋田。人口比でみると、最多の大阪と最少の秋田は、実に5倍超もの開きがある。
地域によって犯罪の傾向はどう違うのか。暴行・傷害・脅迫などの粗暴犯と、詐欺・横領・偽造などの知能犯を、人口10万人あたりの認知件数で比べた。東京・大阪は、粗暴犯と知能犯いずれも、全国平均より大幅に多い。島根・鳥取・岩手・秋田・大分・鹿児島などは、どちらも全国平均より少ない。
東京・大阪の大都市以外でも、滋賀・栃木・香川などは知能犯が平均より多く、群馬・兵庫・沖縄などは粗暴犯が多い傾向。首都圏の千葉・茨城・神奈川・埼玉は、犯罪の傾向が比較的似ている。一方で、関西圏をみると、滋賀と奈良は知能犯の多い傾向、兵庫・和歌山は粗暴犯の多い傾向があり、同じ関西でも対照的だ。
さらに詳しくみるため、13~17年の5年間の犯罪別平均件数を計算し、人口10万人比の都道府県別ランキングを作成した。その結果、多くの犯罪で大阪が全国ワーストだった。
大阪の犯罪の多さを象徴してきたのがひったくり。ピークの00年には、1日平均約30件発生。大阪府警は自転車かご用のひったくり防止カバーを府民に無料で配ったり、防犯カメラ設置を自治体に促したりするなど対策を強化。未成年の犯行も多いため、補導や支援に力を入れてきた。
その結果、17年の件数は集計方式が同じ1989年以降で最少となった。路上強盗や車上ねらいなども大きく減少。ただ、認知件数の全国ワーストを返上するまでには至っていない。
府警犯罪抑止戦略本部の阿田光幸副本部長は「数字は改善しても、体感治安は良くなっていない。府民の安心感を高めるため、検挙と防犯対策に一層力を入れたい」と話す。体感治安とは、人々が日常生活で実感する治安状況のことだ。
全国の認知件数のうち、7割の約65万5千件が窃盗。さらに細かく分類すると、愛車を持ち去る自動車盗、住宅などに忍び入る侵入盗などがあり、身近で被害に遭いやすい犯罪といえる。そのいずれも、茨城が人口比で全国最多だ。
この実態を茨城県警はどうみているのだろうか。
自動車盗は、盗難車を解体施設(ヤード)へと運び、解体後に部品を海外へ売りさばくケースが多いとみられる。ヤードが立地しやすい条件が県内にそろっているのでは、と茨城県警はみる。東京など都市部と比べ、地価が安く整地された土地も多い。隣接する千葉や栃木には大規模な中古車オークション会場があり、周辺に自動車関連業者が集中。車や部品を運びやすい高速道や港湾施設も整っている。「ヤードが多いため、盗難車を扱う不正施設が目立ちにくい」(県警生活安全総務課)という。