紙谷武医師「柔道であったら、軸足なのか、刈り足なのか、つり手なのか、引き手なのか、それによってベストの治療選択をするようにしています」(※写真はイメージ)
紙谷武医師「柔道であったら、軸足なのか、刈り足なのか、つり手なのか、引き手なのか、それによってベストの治療選択をするようにしています」(※写真はイメージ)
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 体重無差別で柔道日本一を争う全日本柔道選手権大会が29日、東京・日本武道館で開催される。国内では2020年東京五輪という一大イベントを控え、スポーツ熱も高まりを見せている。選手が競技でベストを尽くすためには、どれだけ良い状態でトレーニングや試合に臨めるかが重要だ。発売中のAERAムック『AERA Premium 医者・医学部がわかる2018』では、専門の医療分野でスポーツ外傷・障害と向き合い、アスリートの活躍を支えるスポーツドクターを競技別に取材。ここでは柔道を紹介する。

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 柔道の外傷で多いのは、膝や肩、肘などの部位を痛めるもの。膝だと前十字靱帯損傷や半月板損傷、内側側副靱帯損傷、肩だと脱臼などだ。ただ、投げたり、押さえ込んだりという競技の特徴から、まれに頭部や頸部を損傷して重傷化したり死亡したりするケースもある。

「2012~14年は、柔道事故で亡くなる方は0人でしたが、その前は年間5~6人くらいいらっしゃいました。今は、慶應義塾大学理工学部の大宮正毅先生の研究室で頭部保護具の研究をするなど、各方面の協力を仰ぎながら柔道事故ゼロを目指して活動しています」

 そう話すのは、全日本柔道連盟で医科学副委員長を務める紙谷武医師。実家が柔道場を開いていたこともあり、自身も小学1年生から柔道を始めたという経歴を持つ。

 医師の道を選んだのは、小学3年生のとき。「心房中隔欠損症の手術をしたときに、治してくれた医師たちに憧れて、将来は自分も人を救える立場に立ちたいと思うようになりました」

 学生時代、一般外科(消化器外科)と整形外科のどちらに進むか悩んだが、「やはりスポーツ選手、特に柔道選手と関わりが持てるような仕事がしたい」と思い、整形外科を選んだ。

 現在は、地域医療機能推進機構東京新宿メディカルセンターに勤務しながら、全柔連の医科学副委員長を務める。

「現在、医科学委員は10人です。そのうちナショナルチームを担当しているのが私を含め4人。年に4、5回ある大会の帯同をこの4人で割り振って回しています。ほかにも私は頭部や頸部の重傷外傷の予防活動もやっています」

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