ジャーナリストの田原総一朗氏は、安倍内閣の支持率が微増した理由を解説する。
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先週末に共同通信が安倍内閣についての世論調査を実施し、1日夕刻に私に電話でコメントを求めてきた。
私は、森友問題の証人喚問で佐川宣寿前理財局長が50回以上も証言拒否を繰り返したので、当然、安倍内閣の支持率は大きく下がるはずだ、と予想していた。ところが、なんと3月17、18日の調査よりも3.7ポイント上昇して、42.4%だというのである。共同通信側もいささかならず驚いているようであった。
なお、佐川氏の証言に、“納得できる”が19.5%で、“納得できない”が72.6%だったようだ。これは当然だろう。
だが、なぜ安倍内閣の支持率がわずかではあるが上昇するという、あり得べからざることが起きたのか。
その要因は3月26日に北京で行われた習近平国家主席・金正恩委員長電撃会談ではないかと捉えている。世界中が注目し、国民の関心がこちらへ向かったのだろう。
ではなぜ電撃会談が行われたのか。
2017年にはトランプ大統領は、北朝鮮を追いつめられるのは中国しかないと思い込んで期待していた。ところが、中国にはそれができないと判断して、直接米朝首脳会談を行う決意をした。そして中国には、期待を裏切った怒りもあり、6兆円にも及ぶ制裁関税を課すと宣言した。
そこで習近平氏は、強引に金正恩氏を呼び寄せ、北朝鮮は中国の思いどおりに動く、バカなまねはヤメヨと強く求め、また金正恩氏もトランプ氏の武力行使を阻止するために、中国という強い味方がいる、と示したかったのだろう。
この電撃会談によって、文在寅氏が進めていた米朝首脳会談に、中国が割り込んできたことになる。そして、日本は蚊帳の外となった。ジャパン・パッシングである。外交当事者たちは危機意識をつのらせている。その最中、トランプ氏がアルミニウムや鉄鋼製品の輸入にそれぞれ10%、25%の関税を課す、と宣言した。