今回の中朝首脳会談では、金正恩は以下のように語ったという。
『金日成主席と金正日総書記の遺訓に基づき、半島の非核化に尽力することは、われわれの一貫した立場』
『韓国と米国が善意をもって、われわれの努力に応じ、平和実現のために段階的で同時並行的な措置を取るならば、非核化問題は解決に至ることが可能』
段階的ということは、いっきに和解は見込めないということで、それはつまり、北朝鮮は一方的に核放棄はしないということを意味する。そして、それでも対話が決裂して戦争に向かうような流れではなく、継続協議に持っていきたいとの意思表明でもある。
しかも「同時並行的」ということは、先に北朝鮮側が「新規の実験の凍結」を打ち出したので、米韓側もそれに見合うカードを切れということだろう。
これに対し、米国側はあくまで「北朝鮮の非核化」を前提とする姿勢を堅持している。
「トランプ政権が金正恩の言葉を鵜呑みにして在韓米軍を撤収するなどという選択は非現実的。そうなれば、北朝鮮側だけが核放棄するはずもない。韓国も中国も『北朝鮮は非核化に意欲的』との印象を広めているが、肝心の北朝鮮側からは、米朝対話を求めるという以上のことは発信されておらず、非核化に意欲的な姿勢はみえない」(外務省関係者)
以上のように、北朝鮮の言動は一貫しており、矛盾はない。アメリカが引かないなら、北朝鮮は核を手放さないということだ。
他方、北朝鮮の出方を予測するもう一つの指標は「北朝鮮側から見た安全保障上の選択肢の優先順位」だ。金正恩体制の安全保障にとって最重要なのは、客観的にみて、何といっても「米朝戦争」である。仮に戦争となれば、北朝鮮に勝ち目はなく、政権は滅びる。したがって、北朝鮮にとって譲れない選択肢は実は「戦争回避」なのだ。
その次は、アメリカに攻めこまれないだけの対米抑止力の確保、すなわち核ICBMの開発・保有である。
しかし、その過程で戦争になっては元も子もない。