帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「死を生きる」(朝日新聞出版)など多数の著書がある帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「死を生きる」(朝日新聞出版)など多数の著書がある
高齢になるにつれて、大小便のトラブルは多くなる(※写真はイメージ)高齢になるにつれて、大小便のトラブルは多くなる(※写真はイメージ)
 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。貝原益軒の『養生訓』を元に自身の“養生訓”を明かす。

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【貝原益軒 養生訓】(巻第五の36)
二便は早く通じて去(さる)べし。こらゆるは害あり。
もし、不意に、いそがしき事出来ては、
二便を去(さる)べきいとまなし。

 養生訓では「二便(大便と小便)」という項目を設けて、便の排泄についても語っています。まずは、

「うへては座して小便し、飽(あき)ては立(たち)て小便すべし」(巻第五の35)

 というのです。つまり空腹のときは座って、満腹のときは立って小便をしなさいというわけです。

 最近、小便を洋式の便座に座ってする人が増えていると聞きますが、私は座っては苦手です。立ってした方がすっきりしますね。江戸時代では座ってすることがよくあったのでしょうか。益軒先生のこの教えは、よくわからないところがあります。

 続いて、「二便は早く排泄しなさい。我慢するのは害がある」(巻第五の36)と言っています。「小便を長く我慢していると、たちまち小便がふさがって、排尿できない病気になることがある。これを転俘(てんふ)という。また淋(りん=頻尿)となる。大便をしばしば我慢すれば、気痔(きじ)になる」(同)というのです。

 淋とは尿道に炎症が起こって頻尿になることです。気痔とは脇腹が腫れたり、肛門が痛くなったり、大便が出なくなったり、血便になったり、脱肛したりすることです。いずれにしろ、二便の我慢はまるでいいことがありません。

 
 さらに「大便を無理に出そうとして息んではいけない。息むとのぼせ、眼の充血、動悸などが起きて、体によくない。自然にまかせるべきである」(同)とも注意しています。そして「いつも便秘がちな人は、毎日厠(かわや)へ行って、息まないで、少しでもよいから便通をつけるようにしたほうがいい」(巻第五の37)と勧めています。

 便秘には麻の実、胡麻、あんずの種子、桃の種子などを食べるとよい、逆に、柿、芥子(からし)などは便秘になるともいっています。

 また、「便秘は大きな害がないが、小便が長く出ないのは危ない」(巻第五の36)とクギを刺しています。高齢になるにつれて、大小便のトラブルは多くなってきます。二便についての益軒先生の指導はとても適切で、熟読すべきものでしょう。

 小便では、前立腺肥大による夜間頻尿も深刻です。厚生労働省の患者調査(2014年)によると前立腺肥大症は51万人いて、そのうち44万4千人が65歳以上です。

 西洋医学だけでなく伝統医学にも精通した統合医学の第一人者、アンドルー・ワイル博士は著書『ワイル博士の医食同源』(角川書店)の中で、前立腺の病気によい食事療法として次のことを推奨しています。

(1)動物性食品と飽和脂肪酸の摂取をへらす。(2)規則的に大豆食品を食べる(3)新鮮な果物と野菜をたくさん食べる(4)ナッツ類を食べる。(5)緑茶をたくさんのむ──など。

 このうち大豆食品(イソフラボン)を食べるのは私も実践しています。82歳になっても夜間頻尿に悩むことがないのは、長年にわたる晩酌の友、湯豆腐のおかげだと思っています。

週刊朝日 2018年4月6日号