
放送中の朝ドラ「わろてんか」でヒロインの夫を演じたこともあり、「爽やか好青年」という印象の松坂桃李さん。実は、そのイメージを裏切るような役柄をたくさん演じています。今回の主演映画『娼年』には「性描写をここまでリアルにやる映画って、ちょっとないと思う」と作家の林真理子さんもビックリ。
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林:(映画の)原作(『娼年』石田衣良)のリョウ君は繊細でひ弱な美少年という感じでしたが、映画のリョウ君は非常にたくましい肉体を持っているし、自己が確立している感じですよね。娼夫なんかやらなくても、ふつうに恋人もできるだろうし、楽しく暮らしていけそうですけど。
松坂:なるべくふつうっぽくすることによって、どの女性に対しても平等でいられ、フラットな関係が成立するというのが、この作品の肝でした。ふつうっぽさから来るリアリティーを伝えていきたいねと、(監督の)三浦(大輔)さんと話しました。
林:先輩のコールボーイが、「リョウ君は売れると思ってた。だって、ふつうだもん」って言いますよね。あれはすごく深い意味があって、私が感じた健全さみたいなものを、彼はリョウ君から感じ取ったんでしょうね。松坂さんにぴったりでしたよ。ほれぼれするぐらいたくましかったですけど、ふだんから鍛えてらっしゃるんですか。
松坂:いえ、いまはぜんぜん。時代劇の映画の準備をしているので、殺陣の稽古はやってますけど。
林:そうなんですね。監督は松坂さんご指名だったんですか。
松坂:そうですね。舞台も三浦さんの演出だったんですが、そのときはオファーというより、一度会ってみましょうという感じで。
林:この役、やりたかったんですか。
松坂:やれるんだったら、と思ってました。この作品、過去に何度か映画化の話があったんですが、なかなか実現しなかったんですね。このタイミングで自分がやれたらラッキーだなと思ったんです。
林:これ、ずいぶん前の小説ですもんね(01年発表)。監督、リョウ君になれる人をずっと探してたんでしょうね。