林:なるほど。

松坂:それから、これは僕が勝手に思っているだけなんですが、性に関することって、話しづらい部分もあるじゃないですか。夫婦でも、たぶん女性同士でも。でもこの映画を見終わったあと、感覚がマヒした状態なら、語り合ってもらえるんじゃないかな。そういう会話のハードルをちょっと下げることができる作品だと思うんです。

林:ただこの映画についてインタビューするって、みんな困ると思う。こちらの品性まで疑われそうな気がして、言葉少なになってしまいますよ(笑)。

松坂:うん、確かに。どうやって入っていったらいいんだろう、というのはあるかもしれませんね。

林:「すごかったですね」って言うと下品みたいだし(笑)。

松坂:「何がすごかったんですか? 言ってください」みたいな(笑)。でも、ぜんぜん気にせず、どんどんおっしゃってください。

林:性行為のシーンの「こうして、ああして」というのは、ご自分のアイデアですか。

松坂:いえ、ちゃんと段取りがあります。

林:すごく知的な計算によって、ああいう激しいシーンができているんですね。

松坂:体と体の会話になっているので、ちゃんと“セリフ”を決めないと、ただの濡れ場のアドリブになっちゃいますから。そこは三浦さんと入念に相談しながらやっていきました。今回はセリフでの芝居以上に、肉体を通してのコミュニケーション、体に触れたときの感覚を、自分のなかで気を付けていました。セリフのやりとりがセックスだったので。

林:リョウ君にとっては、セックスが言葉なんですね。いまの若い人って、他人とコミュニケーションとるのがうまくないっていうじゃないですか。30代で性行為未経験の人も珍しくないんでしょう?

松坂:そうらしいですね。どんどん増えていっているとか。

林:人とのかかわり合いを避けようとする時代に、性行為といういちばん密着する行為のコミュニケーションを描いた作品が映画化されたことは、深い意味があると思いますよ。松坂さん、リョウ君についてはどう思いました?

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