放送作家でコラムニストの山田美保子氏が楽屋の流行(はや)りモノを紹介する。今回は、『サントリー』の「オールフリー」について。
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座長が提供する景品の豪華さや会場となった店やホテルの華やかさ、そして、二次会、三次会を含めた時間の長さなどが女性週刊誌に取り沙汰されるのは連続ドラマの打ち上げだ。
だが、局内で行われることも多いバラエティー番組の打ち上げや、高視聴率が獲れたときに会議中に行われるプチ祝いなどは年々簡素化されているように思う。
ドラマとバラエティーとでは、そもそも予算に大きな差があって、それが大きく影響しているのだけれど、近年、バラエティーは派手にやらかすことが良しとされない傾向にあるような……。これもまた、ご時世なのだろう。
そんなバラエティーの打ち上げで人気の飲み物と言えば、『サントリー』のノンアルコールビールテイスト飲料「オールフリー」だ。
ノンアルが重宝されるのは二つの理由があって、一つ目は、例の“ご時世”のため、真っ昼間から酒を飲むのはいかがなものか……ということから。私が若い頃は、夕方になると制作局でビールやウイスキーを飲んでいる年配ディレクターを毎日のように見かけたものだが、ホントに世の中は変わったのである。
二つ目の理由は、男性放送作家や制作会社のディレクターの中にクルマで来ている人が意外と多いためだ。
それ以外のシーンでは酒を嗜(たしな)むため、ノンアルの「オールフリー」は、「知っているけれど飲むのは初めて」という人たちが、「旨いね」「俺、これでいいや」とCMのような感想をしばしば漏らす。さらには、「ビール、飲んじゃった気分」という声まであって、いっきに人気が高まる。
実は、舞台の打ち上げにも「オールフリー」は使われていて、楽屋の廊下にケースが山積みになっているのをよく見かける。
この春、リニューアルされた「オールフリー」は、“ビールらしい美味しさ”のもととなる香りを見つけるために、約40種のビール類を飲んだり香ったりすることで中身の方向性を決定。
さらに、候補となるビール類に含まれる約30種の香りを専用の分析機器を用いて分析し、鍵を握る香りを見つけ、「飲んだときの爽快な刺激につながること」に辿り着いたのだという。
新CMキャラクターは香取慎吾と稲垣吾郎。香取は以前から愛飲者。ワイン通で知られる稲垣も、その美味しさに驚いているそうだ。
ノンアルなのに、ビールらしい気持ちの良い軽快なのど越しになった「オールフリー」。今春、さらに指名買いが増えそうな気配だ。
※週刊朝日 2018年3月16日号