そうだといいなと思います。「ドラえもん」と接してきた世代は幅広くて、今の子供たちはもちろん今の「ドラえもん」と接してると思うんですけど、ちょうど僕くらいの世代の人たちが親になって、子供と一緒に見にいく場合も多いだろうなって。そういう世代の間をつなぐ役割になれたらいいなっていうことは、曲を作りながらだんだん思っていきました。だからと言って、いわゆる子供向けの音楽を作ろうとしたら絶対にいけないと思っていて、藤子先生がすごいのは、藤子先生のやりたいことを子供たちに向けて真剣にやっていたところなんですよね。子供たちをひとりの人間としてちゃんと信頼してる感じがあって。子供ってこんな感じでしょうっていう、子供たちを最大公約数でとらえる考え方の対極にいる気がするんです。だからサウンドは変に子供向けのものではなく、今の星野源のサウンドなんですけど、子供たちはきっとそういう新しいものを素直に楽しんでくれると思うし、そのなかで一緒に見たり聴いたりする親たちの世代も「あ!」って思ってくれたらいいなって。
──「ぼくドラえもん」のメロディーに気づくと、ニヤッとしちゃいますよね。
別に気づかなくても、それはそれで成立するように編曲やコードを変えているので、反応する人にだけトリガーがガッと引かれるっていう。でもあのメロディーを入れることで、曲が時代をつなぎ合わせる中継地点みたいなものになるんじゃないかなと、次第に思うようになったんです。そういう試みも含め、今回は本当に好き放題やらせてもらって(笑)。きっとそれは、小さい子供からおじいちゃんおばあちゃんまで、本当に日本人で知らない人がいない「ドラえもん」という場所でなければできなかったことですよね。だから、やっぱり「ドラえもん」はすごい、藤子先生はすごいっていう結論になりました。
(取材・構成/門間雄介)
※週刊朝日 2018年3月9日号