「実は上手な怒り方には6つのルールがあるのです。これをいつも意識しながら、反復練習して、身につけていくことですね」

 まず自分のリクエストはシンプルに、明確に伝える。

「たとえば自分が購入した商品に不具合があったとき、『不愉快だ、どうしてくれるんだ!』と言っても、何にもなりませんよね。『修理してほしい』『取り換えてほしい』等、自分が何を求めているかを相手に具体的に伝えるクセをつけましょう」

 そして怒るときには、“私”を主語にして伝える。

「『おまえはお父さんの気持ちがわかってない!』は、相手を責める言葉です。これでは相手は心を閉ざしてしまうかもしれません。相手の権利も尊重しながら自分の感情や意見や状況を伝えるには、『お父さんはとても心配したんだよ』と、自分を主語にすることです」

 また、「前もそうだったけれど」「何度も言っているけれど」等、過去を持ち出す言葉を使うのもNGだ。

「目の前の出来事だけでなく過去の話も持ち出されれば、相手は『なぜ今更そんな話をするのか』と不信感を抱くだけです。また過去を持ち出す言葉以外に『いつも』『絶対』『必ず』といった、自分の怒りを強調するような言葉もNGワード。

『靴下、いつも脱ぎっぱなしじゃないの!』と怒っても、相手には『いつもじゃないよ』という反抗心が生まれるだけ。『靴下は脱いだらきちんと洗濯かごに入れてね』と、自分の気持ちは“その場”で余計な感情を抜きにして伝えましょう」

 そして“程度言葉”ではなく、正確な表現を使う。

「『書類をしっかり確認して』『子供をちゃんと見ておいて』等、普段の生活の中で程度言葉は頻繁に使ってしまいますよね。でも“しっかり”や“ちゃんと”という程度言葉は人によって基準が違いますから、トラブルのもとになりがちです。互いに基準がわかるようにするには、6W(When〈いつ〉、Where〈どこで〉、Who〈誰が〉、Whom〈誰に〉、What〈何を〉、Why〈なぜ〉)と3H(How to〈どのように〉、How many〈どれだけ(数量)〉、How much〈いくら(金額)〉)で伝えることです。自分が望んでいることは、誰でもわかる表現で伝えることが大切なのです」

 低いトーンでゆっくり話すことも必要だ。興奮するとついつい高いトーンで早口で話してしまいがちだが、それを聞かされる相手はうんざりしてしまうだけだ。

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