若い頃から、映画監督を志していたわけではないという。フランシス・フォード・コッポラの娘として生まれ、幼い頃から映画は身近なものだったけれど、20代の頃は、映像にファッションに音楽と、興味の対象がたくさんありすぎて、行き先が、まだ見えていなかった。
「自分自身で映画を作り始めて“これだ!”と思いました。映画は、自分が興味を持っていたすべての分野を網羅できるものだったから」
ソフィア・コッポラさんはデビュー以来ずっと、自身で脚本を手がけている。2作目の長編「ロスト・イン・トランスレーション」(2003年)では、アカデミー賞脚本賞を、最新作「The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ」では初のスリラーに挑戦し、カンヌ国際映画祭の監督賞を、女性としては56年ぶりに受賞した。
「前作の『ブリングリング』では、現代社会の歪みから生まれた物騒な、たちの悪い若い世代を描きました。その反動もあり、次は静かで美しい時代にフォーカスしたいと思ったのです。そんなとき、たまたま勧められて読んだ原作小説の時代背景と設定、そのダークな内容に惹かれました。デリケートでフェミニンな背景の中で、ダークな物語を描く、その対比が面白いと思ったのです。私は、映画の醍醐味は、それを鑑賞している時間は、異質の世界の中に入り込めることだと思っているので」
先日開催されたゴールデングローブ賞の授賞式では、ハリウッドのセクハラ問題で多くの女優が抗議のために黒の衣装で登場するなど、アメリカのエンターテインメント業界では、男女格差に反対する運動も高まりを見せているが、映画はまだまだ男性優位の世界。そんな中で、彼女自身は、なるべく女性も働きやすい職場をつくれるよう心がけている。