20歳を迎えるまでは、芝居そのものやキャラクターだけでなく、ピュアさや学生らしさ、あるいは透明感のようなものを、ずっと求められているような気がしていた。小学校6年生でスカウトされ、芸能活動を始めたのが13歳のとき。「こう見えて、意外と活動歴が長いんです」と、広瀬アリスはおどけたように言う。
「最初は、目の前にあることを精いっぱいやることに必死で、この仕事をずっと続けていきたいとか、考える余裕がなかった。でも20歳になって、学生以外のいろんな役のオファーをいただくようになって、仕事に対する考え方が変わってきました。一見明るく振る舞っていても、人って、内側にコンプレックスや、何かに対する反抗心、将来に対する不安を抱えていたりする。そういう、自分と同じ世代ならではの葛藤や、女性ならではの迷いみたいな部分を演じることに、難しさとともに、楽しさを感じるようになりました」
“やったことがない役”に出会うと、ドキドキしたり、ワクワクしたり。映画「巫女っちゃけん。」では、常識も礼儀もない、態度も口も悪い、将来に夢も希望もない主人公の“しわす”を演じた。
「生きてきた境遇は違うけれど、でも、『夢や希望を持て!』なんて無責任に言う大人に反発する気持ちとか、物事に行き詰まって苦しくなってしまう感じとか、役に共感できるところはたくさんありました。台詞一つひとつが心にしっくりきて、『これは、本当はこういうことが言いたいんだろうな』とか、しわすの感情に対していろんな想像が広がって、自然に役に入り込めた気がします」