ネイバーはこうした疑惑を否定していたが、昨年10月、韓国プロサッカー連盟の要請に応じて連盟批判の記事を目立たないように配置していたことが発覚。謝罪に追い込まれたネイバーは「スポーツニュース部門の構造に起因する問題で体制の異なる一般ニュース部門では起こりえない」と釈明したものの、疑いの目はますます強くなっていった。信頼回復を図るため、再発防止策として編集者による記事の選別や配置をやめ、それらを自動的に決定するアルゴリズムにすべてを任せる方針を示した。

 しかし、それが正しい選択かどうかは疑わしい。以前、今回のネイバーと同様にトレンド記事の選定を行う編集者が保守寄りの記事を排除していたことが批判されたフェイスブックが、間違った選択をしたからだ。人間の編集者をすべて解雇し、アルゴリズムでトレンドを決定する方向にかじを切ったフェイスブックのニュース欄にはフェイクニュースが蔓延(まんえん)し、トランプ大統領が誕生する一因となった。機械に任せたところで、メディアとしての責任から逃れられるわけではない。

 ネイバーニュースは日本で言えば「ヤフーニュース」のような存在で、記事のコメント欄に問題を抱えているという点も共通している。多数のメディアの記事を網羅的に配信するプラットフォーム事業者の公共性が、世界的に問われる時代になっているのだ。

週刊朝日  2018年2月9日号

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津田大介

津田大介

津田大介(つだ・だいすけ)/1973年生まれ。ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。ウェブ上の政治メディア「ポリタス」編集長。ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られる。主な著書に『情報戦争を生き抜く』(朝日新書)

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