ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られるジャーナリストでメディア・アクティビストの津田大介氏。韓国のポータルサイト「ネイバー」に起きた事件とその影響を解説する。
【写真】南北合同チーム結成を巡り批判が高まっている韓国の文在寅大統領
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韓国で70%のシェアを占める最大手のポータルサイト「ネイバー」。検索サイトとして高い人気を誇り、多数の提携メディアから提供された記事を掲載する「ネイバーニュース」が広く利用されている。そんなネイバーニュースに掲載された一つの記事を巡って大騒動が起きている。
現在韓国世論を揺るがしているアイスホッケー女子の南北合同チームの記事が掲載された際、そのコメント欄に文在寅(ムンジェイン)大統領を強い口調で非難するコメントが投稿され、それに多数の「いいね」がつけられたのだ。
与党「共に民主党」の秋美愛(チュミエ)代表は1月17日、ネイバーのコメント欄には「個人攻撃や暴言、憎悪」があふれており、それを「黙認、幇助(ほうじょ)するネイバーも同罪だ」と名指しで強く非難。さらに、文大統領への批判コメントにつけられた「いいね」などの合計が記事の表示回数を上回っていたことから、批判コメントを上位に表示するために水増ししたのではないかとの疑惑が政権支持者の間で広がった。批判にさらされたネイバーは19日、この疑惑を解消するとして自ら警察に捜査を依頼。内部調査ではなく外部の捜査機関に委ねることで、火消しを図った格好だ。
こうした批判が過熱する背景には、ネイバーによる世論操作疑惑がある。ネイバーニュースは100以上の提携メディアから提供される記事を選別し、1日に約200記事をトップページに掲載しているのだが、その配置や選定が政治的に偏向しているとの批判が右派・左派双方から上がっていた。