ここにきて、北朝鮮に対する中国の姿勢が変わってきているとジャーナリストの田原総一朗氏は指摘する。
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北朝鮮の核・ミサイル問題をめぐって、20カ国が参加する外相会合が1月16日、カナダのバンクーバーで開かれた。そして、前日には北朝鮮に対して圧力を強めるか、対話を重視するかで温度差が生じたのだが、16日の外相会合では、北朝鮮への圧力を強化することで結束した。
この会合には、ロシアとともに中国は参加しなかったが、北朝鮮に圧倒的な影響力を持っているのは中国である。北朝鮮の貿易の多くに中国がかかわっており、何よりも、中国がもしも原油の供給を止めたら、北朝鮮の社会は成り立たなくなる。
だから、トランプ大統領の米国は、その中国が北朝鮮に本気で圧力をかけるのを期待してきたのだが、はっきり言って、習近平国家主席の中国は、その期待に応じてこなかった。
中国にとって朝鮮半島が韓国によって統一されることは最悪で、北朝鮮という存在がなくてはならず、だから北朝鮮の存在が危うくなるような圧力は慎重に避けてきたわけだ。
国連の第9回、第10回の北朝鮮への安保理制裁決議でも、北朝鮮の存在が脅かされるような項目は省かれている。だが、ここへきて、習主席の北朝鮮に対する姿勢は、明らかに大きく変わっている。私は昨年の秋まで、実は習主席の中国は、北朝鮮を核保有国として認めるつもりなのではないか、と疑っていた。もしもそうだとすれば、米国や日本とは根本的に姿勢が異なるわけだ。
だが、ここへきて中国は、北朝鮮の核を認めない、という姿勢をはっきりさせたのではないか。
そのことを示しているのは、中国が北朝鮮との国境近くに5カ所の難民収容施設をつくる、と明らかにしたことだ。
中国が北朝鮮を本当に苦しめるのを避けてきたのは、北朝鮮が混迷すれば、少なからぬ国民が難民として中国になだれ込むのを恐れたからである。だから、北朝鮮に対する決定的な制裁は拒んできたのだ。