同市は、古川弁護士の報告書を受け、当時の子育て支援課長と、その上司にあたる子ども青少年部長、総務部門の職員ら6名を構成員とする検証会議を行った。本誌は検証会議前後に作成された同市の複数の内部文書も入手。中にはこう記されていた。
〈報告書の意見については「第三者から違法であるとの指摘を受けたので、検証する」という形で検証会議を設定し、市として古川弁護士の「違法である」との見解を現時点で是認するのではなく、違法かどうか、違法ではなくても指摘を受けた点についてどのように是正をするのか等を検証して、結果を出すというスタンスでよい〉
この時、同市民間保育所運営実施要綱の面積要件である0歳児1人当たり「5平方メートル以上」を「おおむね5平方メートル以上」と改正し、制度を制定した08年4月1日までに遡及適用することで、保育園への補助金交付を「適法」とすることも決められたようだ。
内部資料には、〈検証会議の結果、実施基準(補助金交付基準)に抵触するという瑕疵は、要綱改正で治癒し、保育所入所の判断(緊急入所の是非)も、結論として適切であったということになれば、違法性はなく、補助金の返還も不要という結論になる〉などと記載されていた。
その一方で、〈当時の本件児童の保育所入所について、緊急性、必要性があったか否かについては、(中略)不公正の疑念を抱かれる余地はあり、手続き面における対応は不十分であったことは認める〉とも記されていた。
また、文書は職員らの処分についても、〈瑕疵が治癒され、適法状態になれば、当時の部長及び課長を厳重注意するに留めてよいだろう〉と言及。だが、実際には課長のみが戒告処分された。
別の内部資料では〈『おおむね5平方メートル』との改正が、本件のような特殊事情がある場合にも児童の福祉の観点から弾力的な運用を可能とするという意味を持たせた方が、本件では追及を防ぐために意図的に改正し遡及適用させたという批判をかわせるのではないかという意見があった〉とも記されていた。市は文書の筋書き通り、16年6月28日付で要綱の面積要件を前記の通り改正。同年8月に開かれた検証会議で補助金の交付は「適法性を有する」と認めていた。