さて、こんなストイックな二人を師匠に持つ染五郎(12)。『勧進帳』では、大先輩たちに囲まれての義経役を見事に務めている。
「初日のあと、(中村)吉右衛門の叔父様に、役の上では義経が一番偉いのだから、先輩だということは忘れて演じなさいと言われました。今はそれを意識して演じています。毎日緊張の連続ですが、昔の役者さんの『自分が楽しんで演じれば、お客様も楽しんでくださる』という言葉を信じて、お芝居に出られる喜びを大切に頑張りたいと思います」
歌舞伎役者としての遺伝子はすでに芽吹きつつあるようだ。「高麗屋に生まれたからには、いつか弁慶を演じたい。最年少で弁慶を演じて記録を作ることが夢です」
三代の覚悟が、歌舞伎の未来を切りひらいていく。(取材・文/佐藤裕美)
※週刊朝日 2018年1月26日号