「鈴木亮平としてではなく西郷さんとして生きる年になる。鈴木亮平でいる時間よりも、スタジオに入って西郷さんでいる時間のほうが長くなるので、自然とそうなっていく」
放送が始まった大河ドラマ「西郷(せご)どん」。ちょうど150年前の明治維新を成し遂げた西郷隆盛の生涯を描く。本誌が色紙を手渡し2018年の抱負を問うと、迷うことなく「生きる」と記した。
昨年7月にクランクインし、鹿児島ロケもあって、今も撮影が続く。ロケでは地元の熱気も感じた。大河初出演で主役を務めることを、自ら「大抜擢(だいばってき)」と認めるが、気負いはなく自然体で臨む。「生きる」という言葉は、演じるのではなく役になりきるという決意の表れでもある。
「この1年は、西郷どんのことしか考えていないです」
イメージに近づけようと体づくりも。
「相撲のシーンがたくさんあるので、まわしが映えるどしんとした体につくっていこうと思っています」
課題は薩摩弁だという。独特のアクセントがあり、「かなり難しいです」と認める。吹き込んだものを何度も聞き直して自分なりに修正しているという。そのかいあってか、公式の予告動画では見事な薩摩弁を披露している。東京外国語大を卒業し英検1級という語学の才能も生かしているのだろう。
大河だけに共演者も豪華だ。西郷に大きな影響を与える薩摩藩主の島津斉彬を演じる渡辺謙について、こう語っている。
「殿としてずっと接してくださるんですよ。僕をあまり近寄らせず、ただ愛情を持って見守ってくださっている。最初のあいさつでは『心配事は俺らにまかせて突っ走っていけ』と。尊敬できる先輩に改めて出会えました」
西郷は維新の英雄で今でもファンが多い。その魅力の元は「共感力」だと感じている。
「どの時代でも人の立場になって考えられる。若いころは困っている農民や武士。『江戸無血開城』もそうですけど、相手の立場に立って、目の前の人の痛みを自分の痛みのように感じてしまう。そういうのが何よりも魅力だったんじゃないかと思います」
人間味あふれる西郷像を、1年かけて「生き抜く」つもりだ。(構成/本誌・直木詩帆)
※週刊朝日 2018年1月19日号