
クラリネット&ピアノの初共演
Da Vinci / Nico Gori & Fred Hersch (Bee Jazz)
初共演のデュオ作だ。クラリネット&ピアノと言えば、昨年の来日公演が話題を呼んだガブリエーレ・ミラバッシ&アンドレ・メマーリが成功例として知られる。
米国人のハーシュ(1955~)と1975年生まれのイタリア人ゴリの初対面は、2010年7月の蘭《ノース・シー・ジャズ祭》だった。3組が連続出演するステージのトップ・バッターを、ゴリを含むステファノ・ボラーニ・アンサンブルが務め、2番手をハーシュ・トリオ+2が演奏。2人はお互いのライヴを観た後、ホテルへ帰るバスの中で知り合った。ハーシュが2ヵ月後の9月に休暇のため同地を訪れる予定があり、相談メールのやり取りを通じて、地元のジャズ・クラブでの共演に意気投合。実際に共演をしてみたハーシュは、1曲目からゴリとの音楽的親和性を感じて成功を収めると、逆にゴリをニューヨークに招いたライヴも実現させて、このデュオ・プロジェクトの関係を深めていった。
ギタリスト、ビル・フリゼールとの『ソングス・ウィ・ノウ』を始め、ヴォーカリストのジャニス・シーゲル、ノーマ・ウィンストンや、ベーシストのマット・ケンドリックとデュオ・アルバムを制作してきたハーシュにとって、この編成は得意としており、パートナーが管楽器奏者ということで守備範囲の拡大につながった。ゴリは以前からハーシュのファンで、自身の創作においても大きな源泉になっていたという。リーフレットに記載されている本人のコメントからは、このプロジェクトを実現させたことの喜びと、今後も継続していきたいとの抱負が伝わってくる。
全10曲の内訳はカヴァー3曲、ハーシュ・オリジナル6曲とゴリ・オリジナル1曲。このいささかバランスを欠いた選曲は、キャリアに勝るハーシュが多めに自作を提供したと見ることもできるが、実はせっかくハーシュと共演するのだからとゴリがリクエストした結果ではないだろうか。本作のためのハーシュの書き下ろしと思われる#2は、美旋律のバラード。ゆったりとしたテーマでハーモニーを奏でるトリオ作の再演曲#3、2人の技が共鳴し合う#4、快活なサウンドで最後にぴたりと着地するトリオ+2とポケット・オーケストラのレパートリー#6、ピアノの表現美が印象深いトリオの初演曲#9と、ハーシュのファンは新たなデュオ・ヴァージョンとして楽しめること間違いない。ゴリとは初対面のリスナーでも、#1や#8のプレイによってハーシュがデュオ・パートナーに認めただけのことはあるテクニシャンだと理解できるはずだ。スタンダード・ナンバーで幕を開け、お互いに技を繰り出す名曲#10で締めくくる構成も好ましい。
【収録曲一覧】
1. Old Devil Moon
2. Da Vinci
3. Mandevilla
4. Down Home
5. 2-5
6. Lee’s Dream
7. Hot House Flower
8. Doce De Coco
9. At The Close Of The Day
10. Tea For Two
ニコ・ゴリ:Nico Gori(cl)
フレッド・ハーシュ:Fred Hersch(p)(allmusic.comへリンクします)
2012年作品、伊ウディネ録音