高知県内にある坂本龍馬像。騒動をどう見ているだろうか(c)朝日新聞社
高知県内にある坂本龍馬像。騒動をどう見ているだろうか(c)朝日新聞社

 11月に没後150年を迎えた坂本龍馬。地元高知県は関連行事に沸く一方で、ある提言の波紋が広がっている。脱暗記の歴史教育のため、教科書に載せる用語を半減させるという内容で、坂本龍馬や吉田松陰などが削る候補となった。

 12月初めの尾崎正直・高知県知事の定例記者会見でも話題になり、「ぜひ残してほしい」と発言。地元高知新聞の声ひろば(電子版)でも「なぜ龍馬をのける?」(69歳主婦、11月28日)、「歴史は暗記だけでない」(小6、12月12日)など反響が広がっている。

『坂本龍馬大鑑』などの著書がある幕末史研究会の小美濃清明(おみのきよはる)会長は「一案とはいえ、龍馬にはまだまだ新たな発見や考え方が出てくる。評価が確定しない人物を抜くのは違和感がある」と話す。唐の時代に編纂された帝王学の書「貞観政要」を、龍馬が読んで感想を書きとめていたことが、最近新たにわかったという。

「リンカーン米大統領が南北戦争で採用したスペンサー銃。実は龍馬もこれを長崎で見て手に入れているんです。2人は同時代に同じものをよいと思っていた。日本史の教科書の中にいる龍馬は、東洋史・世界史の中で見るべきではないかという気もしています」(小美濃会長)

 強制力はないが、予想以上の波紋が広がった提言。発表した「高大連携歴史教育研究会」は高校・大学の教員のグループで、提言もよりよい学びが目的のはず。運営委員長、桃木至朗・大阪大教授はこう語る。

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