ジェフのお気に入りの曲なのにライヴではやったことがなかったという「ザナドゥ」もファンにはうれしい贈り物だ。
ビートルズ・テイストが織り込まれた幻想的な「見果てぬ想い」にはうっとりとなる。初期ELOの昔がよみがえる「10538序曲」に次いで、レーザー光線が飛び交う「トワイライト」。「いとしのベル」でのブギ・ロックの豪快さ、ギターのアンサンブルだけでなく、うねるストリングスの演奏も一興だ。
アメリカの西部への憧れを歌った「ワイルド・ウェスト・ヒーロー」でもジョージ・ハリスン的な演奏が、ハードなブルース・ロックに一転する。
公演の締めくくりは「ミスター・ブルー・スカイ」。「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」が思い浮かぶビートルズ・テイストの曲で、ELOの代表曲でもある。そしてアンコールはチャック・ベリーのカバー曲で、イントロにベートーベンの「運命」の一節を引用したELOのデビュー・ヒットの「ロール・オーヴァー・ベートーヴェン」。
ジェフは「私の音楽歴の中でも最高のひとときだった。自分が想像でき得るものすべてを超えていた」と語る。「でも、これが自分の音楽的な絶頂だとは言いたくないんだ」と意欲的だ。
イギリスの新聞各紙から「壮大なスペクタクル・ショーとして永遠に語り継がれる歴史的ライヴ」との評価を得た公演を収録した本作は、音楽的な豊かさとともに、極上のエンターテインメントを楽しめる作品だ。(音楽評論家・小倉エージ)
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