80年代には低迷期もあり、ジェフはプロデューサーとして活躍。ビートルズのアンソロジー・アルバムにかかわり、ジョージ・ハリスン、ボブ・ディラン、ロイ・オービソン、トム・ペティらによる覆面バンドのトラヴェリング・ウィルベリーズの一員も務めた。
2000年にジェフ・リン主導のもとでELOは再始動。14年からジェフ・リンズELOとしてライヴ活動も再開し、翌年には『アローン・イン・ザ・ユニバース』を発表した。ジェフ・リンは今年、ロックの殿堂入りをはたした。
そして本作に収録されたウェンブリー・スタジアムでの公演に至る。71年発表のデビュー作から最新作の『アローン・イン・ザ・ユニバース』までの主要なヒット曲を披露している。
複雑なアレンジによるレコードでの演奏をライヴで再現できるかどうかが一番の課題だが、完璧主義者を自任するジェフは、ドラムス、ベース以外にギタリスト2人、キーボード奏者3人を起用。弦楽奏者3人とコーラス2人も含め、バンドのメンバーは総勢13人に及ぶ。
映像では、ステージ上に円盤状の宇宙船が浮かび、光線が飛び交うスペクタクルなショーを楽しめる。ジェフ・リンのインタヴューやリハーサルの模様なども挿入され、ドキュメンタリー的な内容になっている。
幕開けは77年の「雨にうたれて」。ストリングスとシンセサイザーによるシンフォニックなオーケストラ・ロックを冒頭から披露する。
60年代のテイストを織り込んだ「イーヴィル・ウーマン」では観客がリフレインを繰り返す。「オーロラの救世主」ではヴァイオリンのロージー・ラングレイがフロントに登場し、ドラマチックな展開を見せる。
ムーヴ時代からのレパートリーで、ELOでもヒットした「ドゥ・ヤ」で一気に盛り上がる。ジェフ自身の少年時代の思い出を歌った「ホエン・アイ・ワズ・ア・ボーイ」をじっくり聞かせ、トラヴェリング・ウィルベリーズの「ハンドル・ウィズ・ケア」も披露する。ジェフが歌うのはジョージ・ハリスンが歌っていたパートだが、その歌いぶりはジョージに敬意を表するようにそっくりだ。