不十分な講習をした事業者には、労働局が業務停止命令などの行政処分を出すこともある。

 コベルコ教習所の矢仲徹太郎社長は取材に対し、

「講習時間は法令で定められている。60分なら60分きちんとやらないとだめなのに、できていなかった」

 と謝罪した。

 あってはならないはずの時間不足の理由は、意外なものだった。受講生は昼食として弁当を業者に注文し、直接購入することになっていた。その業者が昼休みよりも早めに届けに来ているため、弁当の受け渡しをしやすいように、教習センター側が配慮していたのだ。

 たわいもない理由かもしれないが、労働安全に関わる講習がないがしろにされたことを考えると、笑えない問題だ。結局、4月17日に玉掛け講習を受けていた19人は、足りない分の補講を受けることになった。

 福岡労働局は、問題があった北九州教習センターの玉掛け講習について、6月15日から8月14日まで2カ月間の業務停止命令を出した。そしてほかにも時間不足がないか調べて補講などの対応をするよう指示したという。

 弁当業者への配慮は長年続いていた。玉掛け以外のクレーンやフォークリフトの受講生も弁当を食べるので、時間不足はほぼすべての講習で生じているはずだった。以前講習を受けたことがある北九州の30代の男性は、こう証言する。

「講習中なのにセンターの幹部が教室に入ってきて、『弁当屋が来ているので講習をやめなさい』と講師に指示していた」

 ところがコベルコ教習所は福岡労働局に、時間不足があったのは玉掛け講習1日分だけだと文書で回答していた。

 11月に入り本誌が問い合わせると、当初は玉掛け講習1日分だけの問題であるかのように説明していた。弁当業者が長年納入していることを指摘し、事実関係の確認を求めると、12月4日になって時間不足の恐れがある受講者がほかにも多数いることを認めた。技能講習のほかに、小型建設機械などの特別教育でも問題があり、補講や追試などを受けなければいけないのは最大約2万3千人に上るという。

 結果的に福岡労働局には、“うそ”の報告がされていたことになる。コベルコ教習所は、

「1日分だけの問題でないことはわかっていたが、関係者のヒアリングなどに時間がかかった。労働局には結果として実態と異なる報告をしてしまった」(矢仲社長)

 と釈明している。

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実は監督する福岡労働局にも問題が…