つぎは十条。「日本国民たる要件は、法律でこれを定める」

 この簡単な、ちょっと読んだのでは、何を言っているのかよくわからない条文。そこで調べると、この背後に、深い意味が隠されていた。

 日本国民たる要件とは、日本国籍の要件を言うそうです。そう書いてくれればいいのにね。実はこの条文はGHQ草案には入っていません。

 入っていたのは「外国人(在留外国人)は平等に法律の保護を受ける権利を有す」です。とてもわかりやすい。しかし日本側は、GHQとねばり強く交渉して、この項を削り、代わりにこのわかりにくい国民の要件を入れた。この十条、実は明治憲法十八条と同じ。びっくり! 明治憲法をひっくり返してできた新憲法の中に、明治憲法が入っているなんて! この結果、後でできた下位の国籍法によって、日本国籍を取るには、生まれた子の親が日本国民であること、という古い感覚の血統主義が入った。第三章「国民の権利及び義務」冒頭のこの条文によって、これ以下の各条項の人権の享受は、「日本国籍を有している者だけですよ」と制限が加えられた。

 その結果、長年日本で暮らす外国人の権利が、新憲法施行後、排除された。GHQ草案は「平等に法律の保護を受ける」となっていたのに。日本政府の巧妙な抵抗といい、人権感覚のなさといい、びっくりを通り越しますね。

 つぎは憲法十四条一項。「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」

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