血圧サージがなぜキケンなのか。われわれの血管の内皮は年齢とともに変化し、弾力が失われて硬くなっていく。その上にコレステロールなどのアブラが蓄積し、プラークというコブを作るようになる。このプラークが何らかの理由で破裂すると、血管が詰まり、脳卒中や心筋梗塞などの病気を発症する。この過程のなかで、血圧サージは“動脈硬化を加速させ”“プラークを破裂させる”という。

 苅尾医師が話を続ける。

「血圧が急上昇するというのは血管の壁が強い力で押されているということ。それによって内皮がダメージを受けて傷が付き、硬くなっていきます。動脈硬化を加速させてしまうわけです。また、サージの圧はプラークを潰す力があるので、血管が詰まったり破れたりして、脳卒中や心筋梗塞を起こしてしまいます」

 強い圧が末梢の細い血管に及ぶと、そこが詰まって血流が滞る。脳血管性の認知症の発症リスクを高めることもあるそうだ。苅尾医師らが高血圧患者を対象にして検証したところ、血圧サージがある人(46人)で脳卒中を発症した割合は17%で、サージがない人(145人)は7%だった。

 血圧サージの発生に関係するのは、交感神経系の活性化だ。交感神経は自律神経の一種で、血圧や呼吸、消化など生命の維持に欠かせない機能を調整する。

 身体が緊張、興奮すると交感神経が優位になり、心拍数が上がったり、血管が収縮したりする。それによって血圧が上がる。反対にリラックス状態となると副交感神経が優位になって、血圧は下がる。活動している日中は交感神経が優位に、睡眠中は副交感神経が優位になるため、ふつう血圧は日中が高く、夜は低くなる。

 梅村医師は「明け方の覚醒にともなって、交感神経系が活性化されると血圧が上昇します。その幅が大きい場合、モーニングサージを起こして、重大な病気を発症するケースがあるのです」と説明する。

 朝だけではない。力仕事やトイレ(用便)、ダッシュ、筋トレ、喫煙、くしゃみや咳、怒る、冷たい床を歩く、冷水で洗顔する、低い気温、月曜日、朝跳び起きる……など、日常的に行っている行動でも血圧は急上昇することもある。そのトリガー(引き金)を引いたときに、血管が詰まったり破裂したりして、大きな病気を引き起こす。

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