福島原発事故の責任を問う裁判が全国各地で進む中、日本人の原告が米原子炉メーカーの責任を追及する集団訴訟を米国の裁判所に起こした。米国での裁判では、賠償額が数百億円から1兆円を超えることもある。被災者救済につながるのか。ジャーナリストの桐島瞬氏が調査した。
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11月中旬、米マサチューセッツ州ボストンの連邦地方裁判所に一件の訴状が提出された。英文で「集団訴訟訴状と陪審員裁判の要求」と書かれた49ページにわたる訴状の原告欄には、福島県と茨城県に住む3人と六つの法人が名を連ねる。被告は、ボストンに本社を置くゼネラル・エレクトリック社(GE)だ。
GEは、東京電力福島第一原発の原子炉の設計から製造、設置まで関わったメーカー。2011年3月11日の原発事故では、津波による電源喪失から原子炉の冷却ができなくなり、1、3、4号機が爆発、メルトダウンにつながった。原告は、「GEはメルトダウンを起こした原子炉の設計製造や保守に関わってきたのに、福島原発事故による経済的損失などに対して何の責任も取っていない」と主張。事故で莫大な損害を受けたとして、同社に賠償を求めている。
訴状には賠償請求額が書かれていないが、ボストンの地元紙は「問題のある絶望的な原子炉を設計したGEに対する560億円規模の集団訴訟」と報じた。
具体的な問題点として挙げるのは、原子炉の設計不良と設置上の過失などだ。
原子力産業の黎明期だった1960年代、「GEはコストを抑えるために業界標準よりも小さくて安物の原子炉を設計して福島第一原発に設置した」と言及。
しかも当初は海抜35メートルに建てるはずの原子炉建屋を「GEの海水ポンプがこの高さまで水を汲み上げられないことなどから土地を削り、海抜10メートルに設置した。このことが津波を被る原因となった」と指摘している。
さらに、「独立したバックアップ電源などの安全装置を装備しなかったことが、結果的にメルトダウンと放射能の放出を招いた」として、原発事故の責任はGEにあるとした。