日本の集団訴訟は一人ひとりが参加の意思を示して原告団を結成するため、確かに米国方式のほうが規模も広がりやすい。
タカタ製の欠陥エアバッグを巡る集団訴訟では今年9月までに主要自動車メーカー各社が総額1300億円に上る和解金を支払うことで合意した。また過去には、たばこメーカーを訴えた集団訴訟で、42兆円という天文学的な和解金も出た。原発事故避難者は15万人以上にのぼるため、賠償金も膨大な額になることが見込まれる。
陪審員による裁判まで進まなくても、数百億円規模の和解金で決着することも珍しくない。原告弁護士には報酬として和解金や賠償金の3割前後が支払われるため、米国には集団訴訟を専門とする法律事務所があり、提訴できそうな案件とそれに合致する原告を常に探しているという。
裁判の最初のハードルは、この訴訟の原告側が、共通点のある一定範囲の人々(クラス)によって構成されていると裁判所に認証されるかどうかだ。
「クラスアクションを提起するには、【1】そのクラスが十分に多数であるか、【2】構成員が共通の争点を持っているか、【3】原告の代表者がそのクラスの典型的な請求をしているかなどが裁判所から認定される必要があります。その作業に要する時間は約1年から2年ぐらい。認証されるのは全提訴の半分にも達しません」(ゴールドスティン氏)
クラスが認証されると、次はGEの原子炉に欠陥があったかどうかを調べるために、膨大な量の文書提示や関係者の証言録取、それに専門家の証言なども米国、もしくは日本の米国大使館で行われる。
その後、ようやく陪審員による審理に入り判決が出るが、ここまで行くのは全体の3%ほど。莫大な賠償判決を出すことを被告が恐れ、ほとんどのケースは和解になるという。米国の集団訴訟を手がけたことのある弁護士がこう言う。
「引っかかるとしたら原告代表に個人と企業が交ざっているところ。両者は損害の中身も違うはずで、『共通の争点を持っていない』と裁判所から判断され、認証の段階で門前払いされてしまう可能性もあります」