彩りが映えるイクラはぜひ使いたいところ。でも塩分が気になる。ならば、と紅白なますの上に添えることで、少量に抑えた。かに爪しんじょは、しょっぱいすり身を減らし、山芋を足すことで塩分を減らすことに成功した。一方でゆず味のだて巻きは山芋でんぷんをおからパウダーに切り替えることで、糖質を下げる。
仕上げに、紅白餅の代わりに梅麩の錦糸(きんし)巻きを飾りで使用。このこだわりが消費者の五感に訴える。
「一年の健康は元旦にあり」
樋口さんらが掲げるテーマである。
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1食400キロカロリー、塩分3グラム以下の宅配食セット「BC400」で有名な美健倶楽部(神奈川県相模原市)は、「ヘルシーおせち」(12月4日まで予約受け付け)を13年から発売。40代後半以降の女性客から人気が高い。
だて巻きは甘さ控えめで、一般的に1切れ0.5グラムの塩分も0.35グラムに抑えた。最上のグチすり身を使い、全卵を加え、ふんわりしたカステラ風の食感が自慢だ。黒豆(30グラム)の一般的な塩分は0.2~0.3グラムとされているが、0.1グラムに。煮しめ(しいたけ、タケノコ、にんじん各1個、絹さや2枚)は、自社工場で無添加のだしをたっぷり利かせて炊き上げるため、塩分は0.2グラムになった。
また、ヘルシーさを出すために品目から肉を外し、代わりに高たんぱくの松笠イカを大葉みそ焼きに。エビは西京みそをつけて焼くが、自社工場で調理を工夫することで、みそにべったり漬け込むのを避けられる。
25品目が入った二段重おせちは、塩分11グラムで計1千キロカロリー。食材や調理によって「落とせるカロリー」に着目し、全体的に塩分や糖分を下げている。
同社の管理栄養士猿谷ゆかりさんは「塩分などを控えられる品については見直していきますが、すべての味を薄くすると、物足りなさを感じます。しっかり味付けしているものも取り入れ、メリハリを楽しめるようにしています」と語る。(本誌・前田伸也)
※週刊朝日 2017年12月8日号