ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られるジャーナリストでメディア・アクティビストの津田大介氏。「ネットの自由度」に関する国際調査を見て、こう分析する。
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11月14日、国際人権監視NGOの「フリーダムハウス」が、世界各国のインターネットの自由度に関する調査報告書「ネットにおける自由(Freedom on the Net)」の2017年版を公表した。この報告書は、政府によるネットの接続制限や情報遮断、検閲、メディア規制、反政府的主張の監視などの指標を分析、数値化したものだ。調査対象となった65カ国中32カ国で前年に比べ自由度が後退し、改善したのは13カ国にとどまった。
著しく低いところは、ワースト1位の中国を筆頭に、ロシアや中央アジア、東南アジア、中東諸国など独裁的傾向の強い国に広がり、ネット人口全体のおよそ3分の2が何かしらの制限を受けているという。
今年の報告書でとりわけ強調されているのが、政府によるソーシャルメディアでの情報操作活動の激増だ。自国の体制を維持するために行われているケースが多く、その手法は年々多様化、高度化しているという。
実際にどのような情報操作が行われているのか。最も多いのは、一般ユーザーになりすましたフェイクアカウントによる世論誘導だ。65カ国中30カ国で確認されている。政府が情報操作機関を組織したり、外部エージェントに委託したりするかたちで、政府への称賛や政府批判者への攻撃、荒らし(トロール)行為などの大量投稿が行われた。そこに実際の支持者が加わることで、政府の情報操作なのか、実際の政治運動なのかの判別が難しくなっているという。
ボット(自動投稿プログラム)を利用した情報操作も20カ国で確認されている。その多くは、政権批判や反政府活動の妨害、フェイクニュースの拡散などに利用されていた。政府によるフェイクニュースの発信も16カ国で行われているという。主に選挙や国民投票に関連して、野党の活動を妨害したり、信頼を失わせたりすることを目的としている。