作家・北原みのり氏の週刊朝日連載「ニッポンスッポンポンNEO」。北原氏はトランプ大統領の来日で、いろいろな日本が見えたという。
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「誰も紛争など望んでいないわけであります」
安倍さんはトランプ大統領来日時の会見で、「北朝鮮の脅威」についてそう語り、こう締めくくっていた。
「北朝鮮の側から『政策を変えるので話し合いたい』という状況を作っていくことが極めて重要だろうと、こう考えています」
つまり、僕は紛争などしたくないけど、北朝鮮が変わってくれなきゃ、最終的には紛争かもね、と言っているようなものだ。
こういうことを言うDV男は珍しくない。僕は本当は殴りたくないんだ、でも君が僕を傷つけたんだから仕方ない、僕は君に変わってほしいんだ!と殴る被害者面した加害者の話はDVあるある話の一つ。それでも日本の総理大臣が“その手の人”というのは大問題でしょう。だいたい「誰も紛争を望んでいない」とは、国内メディアに向けて訴える「台詞」ではなく、武器を売りつけにきたアメリカの大統領に本気で言うべきことのはずだ。
一方、トランプさんは「日本がアメリカの武器を買えば、日本は安全になり、米国には雇用が生まれる」とウィンウィンみたいなことを言った。さすがセールスマンの国、アメリカ。セールスしに来たことを全く隠さない大統領と、いろいろ売りつけられる隙だらけの私たちの首相の相性は、確かにいいのかもしれない。
トランプさんと安倍さんがゴルフをする日、母が電話をしてきた。
「ゴルフは安倍さんの私費? だからトランプさんは、日曜日に合わせて来たの?」
何言ってるの?と笑って電話を切った後、じわじわと母のほうが正しいのか、という気持ちになってきた。男どうしでつるみ男どうしの「密室」で物事がウヤムヤに決まっていく政治や経済から、どれだけ女が排除され、そのやり方がどれだけ行き詰まっているかを目の当たりにした現実を生きている者として、武器セールスや、接待ゴルフでのガハハな雰囲気、超絶オヤジビジネスを支えている金が私たちの税金だとは、やはり受け入れがたい。