アライヴ・アット・ザ・ヴァンガード/フレッド・ハーシュ
アライヴ・アット・ザ・ヴァンガード/フレッド・ハーシュ
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復帰後の最高傑作
Alive At The Vanguard / Fred Hersch (Palmetto)

 ニューヨーク“ヴィレッジ・ヴァンガード”に所縁の深い新旧のピアニストと言えば、ブラッド・メルドーとビル・エヴァンスが横綱格だが、本作をもってリストの上位にエントリーしたのがフレッド・ハーシュだ。

 ハーシュは2006年、同店にソロ・ピアノで1週間出演した初めてのピアニストの実績がすでにある。2002年にはトリオによる第1弾『ライヴ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード』をリリース。「優れた音響と、出演した数多くの巨人たちの魂が、トリオ・ミュージックを演奏し、聴く最高の場所たらしめている」と考えるハーシュにとって、念願のライヴ作となった。

 身体的には常に不安材料を抱えながら音楽活動を続けるも、2008年には昏睡状態に陥り、生死の境をさまよう。しかしその後、奇跡的な復活を遂げて、ファンを感涙させた。2010年1月録音の『ホィール』は、ジョン・エイベア+エリック・マクファーソンにメンバーを刷新したトリオ作。2人は晩年のアンドリュー・ヒルが起用したリズム・チームであり、ハーシュはそれを知った上で、2007年のヒル逝去を引き継ぐ形となった事実は見逃せない。同作の4ヵ月後には同じトリオによる日本制作盤『エヴリバディーズ・ソング・バット・マイ・オウン』が吹き込まれ、ハーシュのコンディションがかなり回復したことを印象付けた。

 新しいトリオが軌道に乗った2010年の12月、ハーシュは再び名店での1週間連続ソロ公演に臨み、その最終日から『アローン・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード』が生まれた。そしてその1年2ヵ月後、ハーシュ・トリオは同店に1週間出演。このヴァンガード・ライヴ第3弾が制作されたのである。

 ブラジル音楽に精通するハーシュが、中米も守備範囲であることを証明した自作曲「ハヴァナ」で開演。ポール・モチアンに捧げてハーシュが書いた「トリステッセ」は、亡きドラマーの作風を想起させ、チャーリー・パーカーの「セグメント」では、技巧を駆使したピアノで自分流のビバップを打ち出してみせる。

 本作の特色は3つのメドレーが収録されていることだ。オーネット・コールマンの「ロンリー・ウーマン」とエヴァンスの「ナルディス」は一見無関係だが、実は同時代に世に出た楽曲であり、音楽的接点を見出したハーシュのアイデアが光る。「ザ・ウィンド」をオリジナルのイントロ付きのピアノ独奏とした後、「ムーン・アンド・サンド」に進むとトリオに発展する構成がドラマティック。キース・ジャレットを参照した選曲かもしれない。最後はバラード・スタンダード「ザ・ソング・イズ・ユー」で始まり、さらに一捻りしたセロニアス・モンク曲「プレイド・トワイス」で締めくくる。復帰後のハーシュ・トリオの最高作と評したい。

【収録曲一覧】
Disc 1:
1. Havana
2. Tristesse
3. Segment
4. Lonely Woman/Nardis
5. Dream Of Monk
6. Rising, Falling
7. Softly As In A Morning Sunrise
8. Doxy

Disc 2:
1. Opener
2. I Fall In Love Too Easily
3. Jackalope
4. The Wind/Moon And Sand
5. Sartorial
6. From This Moment On
7. The Song Is You/Played Twice

フレッド・ハーシュ:Fred Hersch(p)(allmusic.comへリンクします)
ジョン・エイベア:John Hebert(b)
エリック・マクファーソン:Eric McPherson(ds)

2012年2月ニューヨーク録音

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