林:差別用語は絶対ダメですね。歴史上、当時はそういう呼び方しか存在しなかったものでもダメです。活字はとても神経質かもしれない。
田辺:小説にもそういう波が押し寄せてるんですね。
林:週刊誌のコラムなんかすごく窮屈です。どなたかが「言いがかりの社会」と言って例をあげてましたけど、「長野に行っておいしい信州そばを食べた」とブログに書くと、「うちは貧しくて長野におそばを食べに行く余裕はないです。自分の幸せをそんなに見せびらかしたいですか」とか、「ラーメン屋の店主の気持ちをどう考えるんだ」って言いがかりをつけてくるって(笑)。
田辺:そういう感じありますよね。10年ぐらい前にドラマで銀行強盗の役をやったんですが、車で逃げるときにシートベルトをしなきゃいけない時点で、なんか時代がちょっと変わったなと思って(笑)。
林:強盗が急いで逃げるときに、シートベルトなんてしないですよね(笑)。蜷川幸雄さんの晩年のお芝居に「青い種子は太陽のなかにある」という寺山修司さんの作品があって、昔の作品だから差別されている人たちがたくさん出てきて、差別用語が飛び交ってました。蜷川さんがやりたかったのはそれなのかなと。歌舞伎も差別用語が飛び交ってるし、自由な場所はお芝居だけかもしれない。