Takin' It There
Takin' It There

26歳のテクニシャン
Takin’ It There / Graham Dechter (Capri)

 26歳のギタリストである。カート・ローゼンウィンケルやギラッド・ヘクセルマンが注目を集める中、モダン・ジャズ主流派のファンには嬉しいオーソドックスなテクニシャンだ。

 音楽家の両親のもと、父親のレコード・コレクションからデューク・エリントンやカウント・ベイシーを聴きながら、LAで育った。クラシックのヴァイオリンと作曲を学び、高校の即興演奏クラスでベーシストのマーシャル・ホーキンスに師事したことが、今日への進路を導いている。そしてイーストマン音楽院での1年目を修了した時に、早くも大きなチャンスが訪れた。19歳の若さでクレイトン=ハミルトン・ジャズ・オーケストラに抜擢されたのだ。以降、欧米、アジアのツアーに帯同して腕を磨き、米国屈指の楽団員であるメリットを活用して数多くの著名ミュージシャンと共演。昨年はアルバムとライヴでマイケル・ブーブレ(vo)をサポートするなど、順調にキャリア・アップを図って現在に至る。

 2009年には同楽団のリズム・セクションの協力を得た初リーダー作『Right On Time』をリリース。スタンダードと自作曲の他、デューク・エリントン、サド・ジョーンズ、レイ・ブラウンといったジャズマンのマニアックな楽曲にも着目しており、ジャズ・ファンの側面を反映した点も好感を抱く。

 同作から3年を経たデクターのリーダー第2弾は、前回とまったく同じ顔ぶれが揃ったカルテット作だ。オープニングにウェス・モンゴメリー最晩年作のタイトル曲#1を持ってきたのは、デクターの自信の表れだと受け取れる。そして確かにそのギター・プレイは、ウェス譲りのオクターブ奏法が全開で痛快。ピアノとのコンビネーションが効いたアレンジと合わせ、歌心たっぷりな王道ジャズ・ギターの魅力がいきなり極まって、期待が高まる。ジョン・クレイトンとジェフ・ハミルトンがハマリ役を演じる『ポール・ウィナーズ・ライド・アゲイン』収録のバーニー・ケッセル曲#2、ギター・ソロがバンドを躍動的に牽引するアントニオ・カルロス・ジョビン曲#3、ジョージ・コールマンの隠れ秀作『At Yoshi’s』からの選曲にセンスの良さを感じるミディアム・テンポの楽しくスインギーな#6、リー・モーガンの原曲よりも高速にテンポ・アップして全員が一丸となる#8と、ミュージシャン作曲のカヴァーはどれもジャズ愛に溢れているのがいい。デクターのバンド仲間でライナーノーツを寄稿しているピアニストのジョシュ・ネルソンが、本作のために提供した#5は、各メンバーの持ち味を引き出したブルージーなマーチ。新感覚派ギタリスト好きにも敢えて薦めたい1枚だ。

【収録曲一覧】
1. Road Song
2. Be Deedle Dee Do
3. Chega De Saudade
4. Together & Apart
5. Takin’ It There
6. Father
7. Grease For Graham
8. Hocus Pocus
9. Come Rain Or Come Shine
10. Amanda/Every Time We Say Goodbye

グラハム・デクター:Graham Dechter(g)(allmusic.comへリンクします)
タミール・ヘンデルマン:Tamir Hendelman(p)
ジョン・クレイトン:John Clayton(b)
ジェフ・ハミルトン:Jeff Hamilton(ds)

2012年作品