10月に入っても連日のようにスズメバチに襲われる被害が相次いでいる。最近では行楽地や山村だけでなく、都市部での発生も多く、誰にとっても他人事ではない。テレビ番組で何度も取材されているスズメバチ駆除の第一人者に、その防御法を聞いた。
愛媛県大洲市で車いすに乗った87歳の女性がスズメバチの大群に50分間刺され続け、多臓器不全で死亡してしまった事実が判明したのが10月初旬。9月末には岩手県一関市の園児ら14人が被害に遭い救急搬送、10月4日には山梨で宿泊学習の児童ら10人が相次いでクロスズメバチとみられるハチに刺され、10日には長野県で里山観光中のツアー客11人が襲われた。
スズメバチ駆除の専門家・小川世紀さんは、秋以降こそ危険で、注意が必要だと訴える。
「この時期のスズメバチは生存競争に勝ち残った生命力の強いものだからです。中には、寒くなっても活動を続ける場合もある」
季節が肌寒くなったからといって油断してはいけないのだ。
「もしもスズメバチに遭遇してしまったら、下手に逃げたりせず、ゆっくりしゃがんで、石のように動かずにハチが通り過ぎるのを待つしかありません。ただし、それで100%防御できるという保証はありません」(小川さん)
小川さんによると、最も気を付けてほしいのは土中にできた巣。「これは地雷のようなもので、うっかり踏んでしまったら、数百匹に襲われてしまう。一度刺されると、“警報フェロモン”によって仲間に警報が伝わるので、一斉に攻撃してくる。こうなったら、なすすべはありません」(同)
とにかく油断は大敵。年間600もの巣を駆除してきた小川さんが教える「スズメバチ対処法の四つの誤解」を参考に身を守ろう!(取材・文/本誌・鈴木裕也)
■スズメバチ対策 定説の誤解
【1】攻撃前の「カチカチ音」は聞こえない
スズメバチは人を襲撃する前に「カチカチ」という警告音を鳴らすので、音が聞こえたら慌てずにゆっくりと後ずさりしてその場を離れろといわれるが、これは正しくない。スズメバチの警告音の多くは、耳を澄まさないと聞こえないほどの小さい音。警告音が聞こえないからと安心して身動きしたら、その瞬間に襲われてしまうこともある。