地球から約40光年離れた恒星「トラピスト1」の周りにある惑星の地表イメージ(NASA/JPL)
地球から約40光年離れた恒星「トラピスト1」の周りにある惑星の地表イメージ(NASA/JPL)
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 果てしない宇宙に対する人類の夢が、現実味を帯びてきている。「夢のまた夢」と言われていた“地球外生命”だが、近年の科学や技術の進歩により、まだ見ぬ“未知との遭遇”に手が届きそうなところまで来ているのだ。各国が巨額の資金を投入し、しのぎを削る地球外生命探しの今に迫った。

 中学生が、“未確認飛行物体”UFOを網ですくって捕まえた──。1972年、高知県で起きた「珍事件」を読者は覚えているだろうか。

 UFOを目の当たりにしたという元中学生の一人が、後から当時を振り返って、地元の高知新聞の取材に答えた内容によると、西の夜空に光る筋を見た話が学校で話題になり、同級生5、6人で放課後、見に行ったところ、空飛ぶ円盤に出くわした。全員一目散に逃げたが、数日後、一人がまた出くわし、思わず石を投げた。翌朝、見に行くと、円盤は石の下敷きになっていたので網ですくい、持ち帰ったという。

「間違いなくこの手で触った。変わった物体だった」(98年2月27日付高知新聞)

 ただ、不思議なことに円盤は両手で持っていてもスルリと抜けて飛んでいくし、電気コードでぐるぐる巻きにしても逃げられる。捕まえては逃げられるを繰り返すうち、会えなくなってしまった……。

 真偽のほどは確かめようがないが、当時、全国のマスコミがこぞって取り上げたほか、作家の故・遠藤周作氏までもが興味津々。件(くだん)の中学生の元を訪ね、エッセー集『ボクは好奇心のかたまり』(新潮文庫)でその様子をつづっている。

 宇宙人、すなわち地球外知的生命との遭遇は古今東西、逸話として残っており、その発見は人類の夢でもあった。だが、高知の珍事件から45年が過ぎた今、機は熟しつつある。国家をも巻き込んで、科学者たちの探索が加速しているのだ。

 例えば中国で昨年、世界最大の電波望遠鏡が完成した。直径は500メートル、面積はサッカーコートおよそ30個分もある。目的は、望遠鏡を使って文明を持つ知的生命が発した電波を捉えること。建設費は約182億円。中国は今、国の発展のシンボルとして、巨額の資金を投じ、軍主導の宇宙開発計画を意欲的に進めている。2022年までには独自の宇宙ステーションを完成させ、最終的には月への有人着陸を目指しているのだ。

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