2012年12枚目の12曲入りトゥエルヴ
Twelve / Amina Figarova (In + Out)
先日プロモーションのために初来日したアミナ・フィガロヴァと面談した。公私共にパートナーであるフルート奏者のバート・プラトーが、オランダ大使館から情報を得て、こちらにアクセスしてきたのである。
初対面の前にアミナに関して下調べをした上で、夫妻と新宿で約2時間話した。アゼルバイジャンで生まれ、ロッテルダム音楽院とボストンのバークリー音大で学び、卒業後はオランダを拠点に活動。94年にセプテットの初リーダー作を録音し、オリジナル・ナンバーにこだわり続けながら2010年までに11枚のリーダー作を制作した。ピアニストとしてはマッコイ・タイナー、チック・コリア、モンティ・アレキサンダーに影響を受けており、ビッグバンドと同様の大サウンドを最小の編成で得るためにセプテットを結成したという。2001年の米国同時多発テロに衝撃を受けたアミナは、その前後に両親を亡くす不幸もあって自分自身を見つめ直した。その結果、作曲スタイルが変わり、バンドの編成をセクステットに再編。2004年11月になって3年ぶりのレコーディングに取り組み、生まれた『カム・エスケープ・ウィズ・ミー』と『セプテンバー・スウィート』の2タイトルは、「9.11」後の一音楽家の自己表明である。
アミナの前作『スケッチズ』(2010年録音)は数多くの国をツアーで訪れた経験を元にした楽曲で構成。そしてこの最新作は同じ顔ぶれによるセクステットだ。過去の作品はオランダでの録音だったが、これは夫妻がニューヨークに移住した関係で、初のNY録音となった。もちろんすべての作・編曲はアミナである。アルバム名は全12曲収録の通算12枚目で、今年が2012年であることに由来する。
3管+ピアノ・トリオはハードバップ的なサウンドに依拠しておらず、やはりオーケストラの縮小版的なコンセプトが随所で感じられる。テーマ~ソロ・リレー~テーマの構成は従来型ではあるものの、それぞれの楽曲にストーリーが宿っていて、どれも聴き応えが十分。フルート+トランペット/フリューゲルホーン+テナー/ソプラノサックスが織り成すユニゾン、アンサンブル、ソロイストに対する合いの手は良く計算されたもので、アミナの優れたセンスに共感できる。ハービー・ハンコック『スピーク・ライク・ア・チャイルド』(68年)の成果を踏まえながら、現代性を表現した点は価値が高い。メンバーは全員が無名ながら、実力者揃い。フルートをエネルギッシュに躍動させるバートのスキルにも驚かされた。
【収録曲一覧】
1. NYCST
2. Another Side Of The Ocean
3. Sneaky Seagulls
4. Shut Eyes, Sea Waves,…
5. On The Go
6. Isabelle
7. Make It Happen
8. Twelve
9. New Birth
10. Morning Pace
11. Leila
12. Maria’s Request
アミナ・フィガロヴァ:Amina Figarova(p)(allmusic.comへリンクします)
バート・プラトー:Bart Platteau(fl,ocarina)
2012年2月ニューヨーク録音