ヒット曲「恋」やエッセー『そして生活はつづく』で知られる星野源も、今年夏の高校野球で初優勝した花咲徳栄(とくはる)も、「このハゲー」の暴言女性議員も、みんな埼玉ゆかり。かつて「ダサイタマ」と呼ばれた地だが、最近は何かと話題が多い。日本をリードする大逆転劇か?
埼玉の話題や情報を発信するサイト「そうだ埼玉.com」を運営する、鷺谷政明さんは「今年夏は、県内のどこへ行っても花咲徳栄の話題でした」と振り返る。
埼玉県は東西に広く、市の数が40と全国で最も多い。でも、この夏は高校野球で一つになった。
JR東日本が今年夏に調査した「住みたい駅」ランキングでは、恵比寿や武蔵小杉を抑え、大宮が1位。「らき☆すた」(久喜市鷲宮)、「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」(秩父市)など、埼玉が舞台の人気アニメも多い。「都会と田舎と両方あって話を広げやすく、舞台にしやすい面があると思います」と鷺谷さん。アニメの舞台を巡る「聖地巡礼」で、来県者も増えている。
タモリがかつて名付けた「ダサイタマ」とは、もう言わせない。県庁などは近年、「彩(さい)の国」と積極的にPR。“LOVE埼玉”と胸をはってもいいような気もするが、そこは県民特有の愛のカタチがあるようだ。
「『嫌いじゃないけど』という言い方をよくします。ストレートに『好き』と言わない。『愛してます』って奥さんに言えますか?と聞かれたときの、『今さら恥ずかしい』みたいな感覚です。県民は地元の魅力をよく知りつつ、共感されないだろうとも思っている。『ダサい』『何もない』などとディスられても怒らないのは、それを誰よりもよく知っているし、好きだからなんです」(鷺谷さん)
埼玉県民には「空気を読む力、忖度する力、和を重んじる力」がある。そこが魅力だと鷺谷さんは言う。
快進撃の波は、かつてのレジェンドにも及ぶ。1981年のヒット曲「なぜか埼玉」を歌った、さいたまんぞう。ニッポン放送のラジオ番組「タモリのオールナイトニッポン」で紹介され、人気に火がついた。今はタレントや野球審判などマルチに活動するが、なんと埼玉をテーマにした新曲も構想中というではないか。
「埼玉のことを研究中で、まず40市の名前を全部覚えました。今でも埼玉の代名詞にして頂いているのに一度も住んだことはない。何百回も目の前でがっかりされるのを見ました(笑)。偶然頂いた名前と曲で話題になったのは、運命ですよね」(まんぞうさん)