夜間保育所に子どもを預ける親は、霞が関の官僚から医師、看護師、マスコミ、水商売と、驚くほど幅広い。皮肉にも、保育所では晩ご飯を食べて、お風呂に入り就寝と、規則正しい生活が実現できる。小さな寝息が聞こえてくるそこに、ニッポンの縮図を垣間見る。記者が現場を歩いた。
東京・新大久保のコリアンタウンには、ハングルの看板を掲げる韓国料理屋に交じって、ネパールやタイ、台湾料理の飲食店が増え、通行人も多国籍だ。
繁華街から一本道を入った場所に、24時間態勢の認可保育所「エイビイシイ保育園」はある。
深夜11時50分。この日、お迎えが深夜から朝7時を回る子どもたちは0歳児から6歳児まで26人。消灯された部屋からは、寝息がかすかに聞こえる。
ピンポーン。インターホンが鳴ると、夜勤の4人の保育士らが、一斉に立ち上がる。一人は、寝ている子どもを布団から抱き上げ、一人は子どものリュックと荷物を素早く取る。
「おかえりなさい」
もう一人は、笑顔で母親を迎えた。「食事のときに、スプーンに興味を持ってつかんでいましたよ」
園で過ごした子どもの様子を丁寧に伝え、母親と子どもを見送る。0時を回ったころ、再びインターホンが鳴った。外国人の母親だった。4歳の女の子は、目をこすりながら、「ママ今日は早いね」と玄関に向かう。いつもは午前3時過ぎだという。保育士の大橋格さん(35)が、「ちゃんと寝るんだよ」と送り出した。
お迎えラッシュは深夜2時ごろまで続く。
歌舞伎町やコリアンタウンに近く、親は外国籍や職業も飲食関係が主かと想像しがちだが、実は、霞が関の官僚から医師、看護師まで、驚くほど幅が広い。
1983年に夫の片野仁志理事長と新宿・職安通りの一室で園を開設し、現在の場所に移転するまで「新宿の肝っ玉母さん」として園を切り盛りしてきた、片野清美園長(67)が話す。
「東京医科大学病院に東京女子医科大学病院、慶応義塾大学病院。新宿区は大病院が集まっているから、医者や看護師の子どもも多い。病院の保育所は深夜は開いていないのよ」