夫婦そろって霞が関の官僚という親もいた。北朝鮮によるミサイル発射で、「お父さんが忙しくなる」とぼやいた子どももいたという。前出の大橋さんも「国会が始まるとお迎えが深夜になることもあります。これから選挙ですから、また忙しくなる人もいるかもしれない」と話す。
マスコミ勤務の親を持つ子どもも不規則になりやすい。「親がクタクタに疲れて、お風呂や夕食を省いて子どもが寝てしまうこともある。でもここに来れば、夕食を食べてお風呂に入って、午後8時半には就寝と、規則正しい生活ができる」
全国には約2万5千の認可保育所があるが、夜間もやっているのはわずか80カ所ほどだ。深夜も働き続ける人たちを支える夜間保育所の存在を知ってほしいと思った片野園長は、ドキュメンタリーを専門とする映画監督・大宮浩一さん(59)に、撮影を依頼した。
そこで実現したのが、9月30日公開の映画「夜間もやってる保育園」だ。
大宮監督が言う。
「夜間の保育所といえば、子どもの死亡事故などで報道される無認可の託児所やベビーホテルの印象が強かった。真摯(しんし)に取り組む認可保育所があることを片野さんの手紙で知り、興味がわいたのです」
大宮監督は昨夏から1年間かけて「エイビイシイ保育園」のほか、沖縄の「玉の子夜間保育園」、北海道の「すいせい保育所」、新潟の「エンジェル保育園」など各地の夜間保育所に密着。どの園も個性豊かだ。
エイビイシイ保育園の片野園長は、「滞在時間が長いから体にいいものを食べてほしい」と、有機栽培や無農薬の食材を使う。
「広島にいい鶏肉があると聞けば、現地に足を運び、自分の目で確かめます。『高いでしょ?』とよく聞かれますが、昼と夕食とおやつで1日700円に収まるんですよ」
子どもたちは風邪を引かなくなり、アトピーの子も減ったと感じるという。
地方の園は地域性や生活の背景も都市部とまた違う。たとえば離婚率が高いと言われる沖縄の保育所について、
「大阪など都市部で子どもを授かり、シングルマザーになって故郷に戻ってきた母親も珍しくない。それでも地域で助け合う中で、子どもを育てられる、昔ながらの人間関係が健在な土地における園のありかたは興味深いものでした」(大宮監督)