ネフェルティティ・セッションズ&モア
ネフェルティティ・セッションズ&モア
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伝説のネフェルティティ・セッションの全貌、ついに!
Nefertiti Sessions & More (So What)

 おお、これぞ究極の未発表音源発掘作業ごくろうさん大賞最有力候補作品ではないか。なにしろあなた、長く「おまへんっ!」といわれていた《ネフェルティティ》の、ないはずだった未発表テイクがマスターテープそのままの状態で収録され、しかもマイルスやメンバー(作者のショーターでなくハンコックが主に喋っているのは意外)の、この曲のアプローチに関するきわめて具体的な会話まで完パケ状態とあっては、これはもう。

 さて《ネフェルティティ》、全4テイクが残され、最後のテイク4が同名アルバムに収録されたマスターテイクとなるが、すでにテイク1から最終形に近く、演奏に入る前の段階で周到に練られていたことがわかる。まずはテイク1を演奏、そこでマイルスが「おい、オレたち、メロディーしか演奏しなかったよな」といった意味のことを言ってスタジオ内に笑いが起こり、なるほど歴史的にして伝説ともいえる《ネフェルティティ》は、じつにリラックスした空気のなかから生まれたのですね。たしかにこれは本番ではあるものの、テオ・マセロ(プロデューサー)が後年、「あのころの演奏はリハーサルのようなものだった」と語った言葉の意味がよ~くわかる。4曲目の《マッドネス》はテーマのみで1分にも満たない。マスターテイクが生まれる6月23日に備えてのリハーサルだったのだろう。

《ネフェルティティ》と《マッドネス》のセッションにつづいて登場するのは《ネム・ウム・タルヴェズ》という落差が、すごい。この曲は1970年5月27日、6月3日の2回レコーディングされ、後者のテイクがマスターとして『ライヴ・イヴィル』に、さらに残りのテイクが後年『コンプリート・ジャック・ジョンソン・セッションズ』に収録され、これですべてと思われていたが、ここに新たに未発表の別テイク/ロング・ヴァージョンという隠し玉、しかも8分30秒と尋常でない(『ライヴ・イヴィル』収録のマスターテイクは約4分)。とはいえ単調なメロディーのくり返しで、まあなんというかネムウムでタルヴェズな実験作とでもいっておきましょう。そしてスックと立ち現れるのが、なぜか『シエスタ』からの4曲。ただしいずれも12インチ・マキシ・シングル用のエディット・ヴァージョン、しかもその多くはサンプラー限定収録だったこともあって、コレクターやマニアにはうれしいボーナス・トラック。他方、このCDは、1967年の《ネフェルティティ》から、20年後にあたる1987年の『シエスタ』まで一直線状態でつながっていることによって、マイルスのトランペットの音色がほとんど変わっていないことを強く実感させる。

【収録曲一覧】
1.Nefertiti (take 1)
2.Nefertiti (take 2)
3.Nefertiti (take 3)
4.Madness (take unknown:theme only)
5.Nem Um Talves (unissued long version)
6.Siesta (edit version)
7.Conchita (edit version)
8.Claire (edit version)
9.Augustine (edit version)

1~4:Miles Davis(tp) Wayne Shorter(ts) Herbie Hancock(p) Ron Carter(b) Tony Williams(ds) 1967/6/7(NY)

5:Davis(tp) Keith Jarrett(elp) Hancock(elp) John McLaughlin(elg) Michael Henderson(elb) Airto Moreira(per) Hermet Pascoal(voice) 1970/5/27(NY)

6~9:Davis(tp) Marcus Miller(all other instruments) John Scofield(elg-6) Omar Hakim(ds-6) 1987/1(date unknown)(NY,LA)
※Davis doesn't appear on 7