2位は介護サービスのニチイ学館。水準は351万円と他社に比べて低いが、約19%と大幅に伸びた。

 同社の従業員数は17年3月末現在で1万7551人。16年度の1年間で、1590人増えた。パートなどの臨時雇用者を、正社員に登用したことの影響が大きい。「賃金水準はまだ低いが、処遇を改善することで人手の確保につなげたい」という。

 日産自動車、三菱自動車工業、トヨタ自動車などの自動車メーカーや部品メーカーも、5年前と比べて年収が大きく増えた。

 対照的に、5年間で急落したのが電力業界だ。

 関西電力は5年前と比べ、約15%下がった。東京電力の原発事故で、電力各社は原発を再稼働できなくなった。その影響で、関電は電気料金を2度値上げしており、従業員の処遇にも手をつけざるをえなかった。下落率の上位は電力各社が並ぶが、東電はHD制への移行で従業員数が大きく変わっているため、一覧から省いた。

 下がったとはいえ、電力会社の平均年収は他業界と遜色ない水準。上の国税庁統計のグラフをみると、業界全体の給与水準の高さがわかる。さらに、金融・保険だと、年収が40代後半から50代前半に頭打ちになるのに対し、年功序列型の賃金が比較的長期間にわたって続いている。

 年収は業種でも、企業規模でも大きく変わる。上位100社に入らない業界のなかで、主な企業の平均年収も右上の表で示した。

 地銀のコンコルディア・FGは横浜銀行(神奈川)と東日本銀行(東京)、めぶきFGは常陽銀行(茨城)と足利銀行(栃木)、西日本FHDは西日本シティ銀行(福岡)と長崎銀行(長崎)を、それぞれ傘下に持っている。

 会計不祥事を起こした東芝は8月10日、当初の提出期限から約1カ月遅れで有価証券報告書を出した。報告書によると、平均年収は710万円。5年前比で約11%も落ちている。

 三井物産や住友商事は、資源価格下落の影響などで業績が悪化した。ニコンは近年、デジタルカメラ事業の不振に苦しんでいる。

 経営不振が長引き、台湾・鴻海精密工業の傘下に入ったシャープは646万円。5年前と比べ、約9%下落している。

 経営が苦しくなると、まず賞与の削減、さらに、本給のカットや人員削減と従業員に大きなしわ寄せが及ぶ。平均年収の変遷は、企業の置かれた経営環境や業界内での序列を映している。

週刊朝日  2017年9月1日号