「クレイジージャーニー」(TBS系)などで話題沸騰、世界各地の奇妙なもの、“奇界遺産”を撮り続ける写真家・佐藤健寿が、ニッポンで出会ったのは――?
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まるで童話に出てくる夢の宮殿のようなこの建物は、世界のどこかにあるテーマパークや、変わった博物館ではない。大阪市西部、此花区にある舞洲工場と呼ばれるゴミ処理場なのである。
この施設が完成したのは2001年のこと。内部は行政が設計し、外観をデザインしたのが、20世紀の建築史にその名を残す巨匠建築家、フリーデンスライヒ・フンデルトヴァッサーであった。
オーストリア出身のフンデルトヴァッサーは早い時期から環境保護や有機的なデザインを提唱。自然に基づく曲線美や独特の色彩美を多用し、本来ならば実用本位の無味乾燥な施設であるゴミ処理場を、大阪でも随一の美しい建物に変えてしまった。税金の無駄遣いとの批判もあったそうだが、無駄(装飾)をもって無駄(ゴミ)を制するその試みに、私は拍手を送りたいと思う。なおこの建築のお陰かどうか、2016年に民泊サービスのAirbnbが発表した「世界の注目観光地」ランキングでは此花区がなんと第4位に輝いたそうである。
※週刊朝日 2017年8月18-25号