脳卒中後には後遺症として、言葉が不自由になる言語障害や、食べることが難しくなる嚥下障害が起こることがある。嚥下(えんげ)障害は、高齢者に多い誤嚥性肺炎の原因だ。IT機器を活用する訓練や新しい栄養補給法が登場している。
脳卒中は一命をとりとめたとしても、言葉が話せない、人の言葉が理解できないという言語障害や、食べ物をうまくのみ込めない嚥下障害が残ることがある。リハビリテーション(リハビリ)は発症からできるだけ早期に開始すれば、機能を回復できる可能性が高い。
まず脳神経外科医やリハビリテーション医がMRI(磁気共鳴断層撮影)画像や患者の状態を観察し、脳の障害された部位や程度を診断する。脳卒中の発症から2週間程度は脳内にむくみやさまざまな変化が起こって脳機能が低下し、症状も強く表れるので、慎重に病状を見極める必要がある。
リハビリテーション医の指示により言語聴覚士が訓練をおこなう。
東京都在住の木村義之さん(仮名・67歳)は脳梗塞を発症後、ふつうに話すことができなくなり、言語障害の一つである失語症と診断された。
NTT東日本関東病院リハビリテーション科部長の稲川利光医師はこう語る。
「言語障害には、ろれつが回らない『運動性発話障害』と、話す、聞く、読む、書く、計算することに困難をきたす『失語症』があります。ほとんどの人は大脳の左側に言語を司る言語領域があり、ここが障害されると失語症になります」
運動性発話障害は、相手の話を理解することは問題がないが、唇、舌、声帯などの発声発語器官が麻痺などによって動きが悪くなる。
しかし失語症は、言葉を理解したり、イメージを言葉にしたりする過程で障害が起こる。
失語症の中にもさまざまなタイプがある。ブローカ失語(運動性失語)は相手の話は理解できるが流暢に話すことが難しい。ウェルニッケ失語(感覚性失語)は言葉を理解することが難しく、話すことはできるが言い間違いが多い、同じ言葉や意味不明な言葉を繰り返す。二つのタイプが混合することもある。タイプに応じたリハビリが必要だ。