官邸の意向に従い続ければ良いことが待っている。そう思わされたのが、7月5日付で財務省理財局長から国税庁長官に就いた佐川宣寿氏(59)の昇格だった。財務省は既定の「順当人事」とアピールするが、与野党から批判が出ている。納税者からも反発の声が上がっていて、消費増税に向け世論の理解を得るのにマイナス材料となりそうだ。
学校法人「森友学園」への国有地売却問題を巡る国会答弁で佐川氏は有名になった。質問されても、「資料はすべて廃棄した」「ネット上で情報が流れている時代。個別に確認することは必要ない」などと、真相究明を遠ざけてきた。
財務省OBも嘆く。
「財務省がこれほど時の政治権力に従順になったことはなかった。政権を支えるためにウソをつかなければ、財務官僚は生き残れなくなってしまった」
一連の問題を追及している自由党の森ゆうこ参院議員はあきれる。
「国民の代表である国会議員にあんな答弁を繰り返した佐川さんが栄転されたのでは、国民は納税する気がなくなります」
NPO法人「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長も、
「説明責任を果たすのではなく、別の何かを守りきったと感じた。国税庁であの人が何をしていくのか、見ていかなければならない」
と危惧する。
佐川氏が昇格する一方で、文部科学省では文書の流出が疑われた官僚らへの粛清人事がささやかれる。経済産業省OBの古賀茂明氏は、
「佐川さんが答弁で恥ずかしい思いをしながらも、財務省は最後まで一糸乱れず安倍政権を守り抜いた。だから、財務省全体は好きに人事ができる。一方で、文書を流出させて盾突いた文科省は自由な人事ができない。役所レベルでも“忖度の報酬”を支払っている」
と解説する。
森友問題では市民団体「森友告発プロジェクト」が、小学校建設を受注した会社が大阪府豊中市に出した資料を新たに公開。国有地を値引きする根拠となった地中にあるはずの2万トンのゴミが、194.2トンしか産業廃棄物として処分されていなかったという。
同プロジェクトの賛同人で環境ジャーナリストの青木泰氏は言う。
「この状況で国民の税金を預かる国税庁長官に佐川氏が就任するなんて、ブラックジョークでしかない」
※週刊朝日 2017年7月21日号