柴田梓さん(仮名・29歳)は大阪の食品会社で働いている。45歳の女性上司と39歳の男性上司はすこぶる仲が悪く、いつも職場では気をつかっている。

 女性上司は大阪育ちのキャリアウーマン。持ち物にはヒョウ柄が多いので、ついたあだ名は当然“ラムちゃん”だ。片や男性上司は渋い美声だが、言葉数は少ない東京出身者。しかも顔がいつも青白いので、ついたあだ名は“デスラー”。デスラーは時々、書類の捺印場所を間違えたりといった凡ミスをする。それが2回続いたときに、ラムちゃんが大勢の前で大声で吠えた。

「なんで小学生みたいなミスすんの! あかんやん!な~にしてんねん、しっかりしてや。ちゃんとチェックせな!」

 デスラーは黙り込む(ように見える)。それがまたラムちゃんのパワーを全開に押し上げる。

 結局、デスラーはその後1週間、「関西パワースポット巡りの旅」に出てしまったそうだ。

「男性脳は女性脳ほど、言葉を紡ぐための脳神経回路を使っていませんからね。だから女性から見て『言ったことを言ったとおりにやらない』『すぐに返事をしない』のは当たり前。女性がそこを怒りだしたら、おさまるところはありませんよ」

 ではどうしたら、キャリア女性と男性部下の溝は埋まるのだろうか。

「私は女性管理職教育ではいつも『男性に話しかけるときは名前を呼んで、相手がこちらを見てから3秒待って本題に入る。一単位時間に入れる言葉数も、同世代の女性相手の半分近くに』とアドバイスしています」と黒川さん。

 そして「話し始めに何秒か待つ」「ゆっくりとしゃべる」「脳が違えば、言葉は半分も伝わらないものと心得る」を忘れなければ、激高することは少なくなるという。

「周りが怠慢でバカなくせに、自分をみくびっていると見えるのは、その人の脳が飛びぬけている証拠です。でも自分が優秀すぎると思えば、少しは周りに優しくなれるはずです」

 優秀な者には、周囲への同情といたわりを見せる義務がある。この意識を持つのと持たないのとでは、40代以降の女性の人生は大きく変わってくるのだ。

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