数字好きバカも目立つ。人材育成や組織改革を手がけるAPIコンサルタンツの小山純吾コンサルティング部門長は、あいまいさや恣意(しい)性を排除するのに数字は有効だという。一方で、数字だけをやたらと要求する人は問題だと指摘する。
大手IT企業の若手女性社員は、上司から「細かいことを聞かれてうんざり」とため息をつく。3カ月ごとに売り上げ実績や今後の見込みなどを報告するが、たびたびこう聞かれる。
「相手先の製品の納得度はどのくらい? 契約できる可能性は何%なの」
数字ではっきりと示すのは難しいのに、上司は納得してくれない。上役に報告するため、とにかくデータを集めているのだという。
女性社員はこう話す。
「数字を断定した報告を作るのが大変。根拠もいるのでいろいろこじつけますが、本音は自分でも『わからねーよ』って感じ。報告がわずらわしくて、営業に力を振り向けられない」
この上司は数字が持つ意味や背景を、あまり考慮していないように見える。たとえば売り上げ減は、競争力低下などさまざまな要因があり得るため、原因を分析して対策をとらないといけない。数字好きバカには、データを集めるだけで満足し、その先は他人任せのことがよくある。
高橋公介さん(仮名)は携帯販売会社の代理店のリーダー格。各店ごとの売り上げ目標額が、本社からメールで送られてくる。
「目標は前年度比30%増」
前年度は若者から高齢者まで幅広く販売することで、なんとか前年度比15%増を達成した。その水準からさらに30%増は、どう考えてもできそうにない。
「経営トップは数字でしか部下を評価しないことで有名。達成できなければ、激しく叱責(しっせき)する。中間管理職は必死になり、代理店が追い込まれる」(高橋さん)
売り上げを伸ばそうとあの手この手で契約しようとして、かえって顧客が離れたという。トップが非現実的な数値にこだわれば、末端にしわ寄せがくる。
規則やルールを守ることにうるさい今の社会で、増殖しているバカもいる。公正な業務のために規則は大事だが、仕事の効率を大きく低下させる危険性がある。